前駐日エクアドル大使 インタビュー:赤道にちなんで名付けられた国、エクアドル。その魅力を語る。

注)バルベリス前駐日エクアドル大使は2022年4月11日に離日

この度、帰国を間近に控えた前駐日エクアドル共和国特命全権大使のハイメ・バルベリス閣下へのインタビューを行った。このインタビューを通して、エクアドルという美しい自然の中心地と言える国と、日本とエクアドルの関係の長さについて理解を深めることができた。また、ハイメ・バルベリス大使は両国間の貿易における重要な分野、観光を促進する必要性、エクアドルという国名が赤道にちなんで名付けられた理由についても語っている。

ハイメ・バルベリス大使は、2017年3月に駐日エクアドル大使に就任。2022年にはエクアドルのミッションのトップとしての5年目を迎えた。駐日大使就任以前は、2010年から2015年まではハンガリーに特命全権大使として駐在し、2004年から2005年までは米州機構のエクアドル常駐代表を務めた。2001年から2004年にはドイツのハンブルク総領事館勤務など、重要なミッションに関わってきている。また、キャリアの開始は1979年で、オーストリアのエクアドル大使館、1982年から1985年までウィーンの国連事務局へのエクアドル常駐代表の二等書記官、一等書記官なども経験したベテラン外交官だ

外務省での仕事ではその他に、2015年にキトの国連システム部門の大使を務め、2016年から2017年までは北米とヨーロッパの担当次官も務めている。

Q:エクアドルの首都、キトの市街は自然の中心地としてユネスコの世界文化遺産に認定されていますね。エクアドルは地理的には太陽に最も近い地点でもあるそうですね。

チンボラソと呼ばれているエクアドルの山脈は、科学的な情報によれば、地球の中心からこの山の頂上までの測定した場合、世界最高峰となるそうです。

エクアドルのいくつかの地域、特に南部の都市、クエンカは、外国人駐在員が住むのにとても良い場所と言われています。気候に恵まれ、食べ物もおいしく、よいサービスも受けられることに外国人は楽しさを見出しているのでしょう。

エクアドルではATMで米ドルを引き出せることもあって、とても便利です。 2000年に自国通貨として米ドルを採用しました。これはインフレに直面し、その課題に沿った判断をした結果です。エクアドル政府は物価を安定させるため、米ドルを採用することを決定しました。また、エクアドル政府の主要な優先事項の1つには投資の誘致があるため、米ドルの採用は観光と投資の両方にとって便利且つ好都合であったということもあります。エクアドル経済は、こうしたドル化によってより簡単になりました。経済政策を実施するために国が必要とする最重要課題の一つは、もちろん通貨の安定にありますから。

バルべリス前駐日エクアドル大使

Q:日本での任期を終えて、エクアドルに帰国なさいますね。

はい、キャリア外交官ですので、通常は海外で5年間に亘る任務が与えられます。 その後は2〜3年間はエクアドルの外務省本省に戻り、その後、別の任務が与えられます。 これがエクアドルの外交官としてのキャリアの仕組みです。 日本での任期の5年間は終了いたしますので、すぐに帰国いたします。

Q:日本でのご経験はいかがでしたか。

政治的、経済的、文化的など、多くの分野において、エクアドルと日本の関係を促進するために働くことができたことは大切な経験となりました。私と妻、そして大使館の職員は、ここで達成できたことに大変満足しています。

それにとても興味深いことが多かったです。 新型コロナ感染のパンデミックが起きる前に、私たちは任期の最初の3年間を日本で過ごしていました。その後の2年間は、さまざまな状況で暮らしました。 しかし、それでもエクアドルと日本の二国間関係のために努力し、その関係をより勧めていくことができました。

Q:駐在なさった5年間には、どの業界に主な焦点を当てていらしたのでしょうか。農業ですか、それともエネルギーなどでしょうか?

過去5年間、私たちの主たる焦点となったのは、日本でより多くのみなさまにエクアドルについて知っていただくことでした。ご存知のように、エクアドルは日本社会において、少しずつ知名度を上げています。

私たちは、経済だけにとどまることなく、政治的な接触もいたしました。異なる政治的区分間であっても、より多くの相互作用もたらすために促進を心がけてきました。経済は最重要だと思います。日本とエクアドルの間の貿易の規模は、私たちが望むほど大きくはありませんが、今後、より大きな可能性があると信じています。貿易はこの5年間の優先事項でありました。また、投資を呼び込むことも大変重要であるため、日本企業は様々な分野でのエクアドルへの投資を検討するよう説得いたして参りました。 また、非常に重要だと考えている分野の1つはエネルギーです。しかし、最も成長している分野と言えば、やはり農業でしょう。

日本市場で見かけることができるエクアドル産の農産物のほとんどは、日本とエクアドルの投資の一部でもあります。たとえば、ブロッコリーはエクアドルから来ていますが、一部の生産および流通会社はエクアドル人またはエクアドルの関係を含んだ形をとっています。他の会社は日本企業でもあります。そのような農産物は日本市場向けに生産されています。バナナもエクアドルから日本に輸出される重要な商品です。その他の輸出製品には、エビ、カカオ、カカオの副産物、花、その他の食品が含まれます。

また、エクアドルは再生可能エネルギー資源に関心があり、過去15年間、水力発電エネルギーの生産に大きな重点を置いてきました。これは、エクアドルの地理的立地条件によって、大量の水資源が確保·提供できることがあります。よってエクアドル全土に水力発電施設の建設をすることの容認につながっています。

日本とは別の種類のエネルギーを推進しています。国際協力機構(JICA)の協力を得て、地熱発電の研究を行っています。ただし、これには時間がかかることでしょう。

駐日エクアドル大使館の目標の1つは、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTTP)に参加が可能となることにもあります。エクアドルをこの協定の一部としてみなすよう正式に要請しました。しかし、まだ私たちと同じ状況にある国はたくさんあります。

私たちは、新製品のいくつかを紹介するため、日本の当局と協力してきました。日本市場に参入している商品は高く評価されています。そうした製品の中で主要なものの1つは、カカオです。これはショコラティエに高く評価されています。カカオの生産者の多くは、エクアドルのカカオのみを扱っている店とコラボレーションしています。先ほどからお伝えしている通り、農業分野はエクアドルでは最も重要な分野の1つです。この分野でのさらなる進歩が見られることを期待しています。例えばですが、エクアドルのマンゴーを日本市場に投入するための取り組みもあり、10年以上前からのパイプラインとなっています。

Q:エクアドルの歴史と日本の友情について少し教えていただけますか。両国の関係のマイルストーンとなるような画期的なこととは何でしょうか?

2018年、私たちは日本とエクアドルの外交関係樹立100周年を祝いました。今年は、こうした関係の画期的な出来事について考えるのに良い年でした。

約100年前、エクアドル当局が黄熱病と闘うのを支援するために、日本で有名な細菌学者である野口英世博士を迎え入れました。野口博士の使命は、多くの命を救うためにとても重要でした。

日本で発行された1000円紙幣にある野口英世博士の肖像画は、エクアドルで撮った写真に基づいたイメージによって描かれているということを知り、とても興味深く思いました。野口英世記念館を訪れた際、エクアドルの野口英世博士に渡された軍服の展示も見ました。エクアドル政府は、野口博士の医療分野での研究を援助するために、エクアドル軍の大佐という階級(軍の階級)を与えました。

これがエクアドルと日本の協力と関係の始まりであり、非常に重要なマイルストーンと言えます。つまり、記念すべき出来事となっています。

在任中の最も重要な出来事の1つでは、2018年にレニン·モレノ·エクアドル共和国(前)大統領の訪問が実現したことでした。レニン·モレノ・エクアドル共和国(前)大統領は外交関係樹立100年を記念するために、日本を訪れました。もう一つの注目すべき出来事としては、日本の河野太郎(元)外務大臣がエクアドルに初めて訪問したことも挙げられます。

2021年に開催された東京オリンピック·パラリンピック2020へのエクアドル代表団の参加も重要なイベントでした。東京オリンピック2020では3個、パラリンピックでは3個のメダルを得ています。

獲得したメダルのうち、一つはサイクリングでした。オリンピック開始直後に、エクアドルのサイクリストがオープンサイクリング·レースで優勝し、私は大喜びしました。

Q:エクアドルは本当に特別な国と思います。ユネスコの世界遺産の最初に登録もされていますが、ガラパゴス諸島はエクアドルにとって、何を表しているのでしょうか。

ガラパゴス諸島だけでなく、エクアドル全体への観光を促進しようとしております。

エクアドルカカオ
エクアドル原産ファインアロマカカオ

エクアドルには4つの異なる地域があり、それはとても定義された領域と言えます。エクアドルは決して大きな国ではありませんので、ほとんどの地域を短時間で訪れることができます。エクアドルには、アベニュー・オブ・ザ・ボルケーノ(火山の大通り)と呼ばれる地域があります。そこはドイツの探検家フンボルトがエクアドルを探検したことからも知られています。フンボルトは、火山と活火山の数の多さに感銘を受けました。そのイメージからフンボルトはそこをアベニュー・オブ・ザ・ボルケーノ(火山の大通り)と名付けました。

また、コトパクシというエクアドルの活発な成層火山も知られています。コトパクシは海抜約5800メートルで、海抜約4000メートルの富士山と比べても、約2000メートル以上高いことになります。その他にも沿岸地域、アンデス地域、アマゾン地域、ガラパゴス諸島など、様々な地域·領域がエクアドルにはあります。

エクアドルを訪れる多くの観光客は、もちろん自然を愛し、満喫しています。エクアドルには多くの固有の鳥がおりますので、バード·ウォッチングはエクアドルを訪れる観光客にとって、とても重要な旅のアクティビティです。観光客が楽しむ活動としてもう一つ挙げれば、マナビ県近くの沿岸部で、一年の特定の時期だけ楽しめるホエールウォッチングです。

エクアドルの手工芸品も世界的に高く評価されています。パナマ産であることが一般的に知られているトキージャ帽(通称:パナマ帽)もその一つです。パナマ運河の建設の際、そこで働く労働者はエクアドルから来た帽子をかぶって、太陽から身を守りました。こうした帽子はエクアドルで手作りされており、非常に人気がありました。また、直射日光から保護するのに非常に適しています。

トキージャ帽の品質は編み方によって異なっています。非常に良いと言われるトキージャ帽は、結び目が多いためにナプキンのように感じます。これは作るのに約3〜6か月かかります。というのは、好天の日にのみ、1日2〜3時間だけ、決まった量のわらを使って出来る作業をしていくからです。

バルベリス前駐日エクアドル大使

トキージャ帽は、パナマ運河を訪れたルーズベルト大統領、リチャード·ニクソン大統領、アーネスト·ヘミングウェイなど、こうしたVIPがエクアドルに滞在した時にかぶったことで有名になりました。

Q:エクアドルもまた新型コロナウィルスのパンデミックによって、観光客数は劇的に変化したのでしょう。エクアドルの観光の未来については、どのように予測し、また、さらに促進していかれますか?

エクアドルにとって、観光業は今後の発展の可能性が高い分野であると思います。エクアドル政府は、観光業を促進するため、必要な資金を予算化してあります。アジア太平洋州の国々は、乗り換えなどの接続に関わる多くの要因を抱えているため、より多くの作業·調整が必要であることがわかっています。

日本人は年に数日しか休暇を取りませんが、エクアドルまでやってくるのに丸1日はかかり、帰国にも1日かかります。フライトに合計2日を費やすため、実際にエクアドルで過ごす時間はほとんどありません。これは多くの場合には問題になることでしょう。

政府は、さまざまなエリアから、より多くの観光客を受け入れる可能性を上げるにはどうしたらいいかを模索しています。

Q:エクアドルの公用語はスペイン語ですね。しかし、エクアドルの人口の多さから、方言は1314種類はあるとお聞きしていますが、いかがでしょうか。

エクアドルの人口は1700万人程度ですが、人口のほとんどはメスティーソです。メスティーソと呼ばれる人々は、ヨーロッパ人と先住民との混血です。ですが、エクアドルには独自の言語、習慣、生活様式、および独自の言語を持つ、多くの先住民コミュニティが存在しています。

Q:エクアドルは、自然の権利を尊重して認めた最初の国の1つでしたね。

はい、これはエクアドルが憲法で確立したものです。自然は政府の下で権利を持っており、政府によって採用される政策には、自然を保護する必要があります。エクアドルには国立公園の存在の割合が高いこともあり、自然をテーマにしたアクティビティがたくさん存在しています。エクアドルの自然保護の必要性については、間違いなく意識は高くなっています。

Q:最後の質問となります。エクアドルとは赤道にちなんで名付けられたとお聞きし、とても興味深く思いました。赤道に面した国は沢山ありますが、そのように名付けられたのはエクアドルだけでしょう。その由来を詳しく教えていただけますか。

はい、エクアドルの首都キトから約13 km離れた「世界の中心記念碑(ラ·ミタッドデルムンド)」を訪れることができます。ここは、緯度が0度0分0秒という場所です。この場所では、北半球と南半球を同時に移動することが可能であり、この地理的事実が、私の国がエクアドル共和国と呼ばれる理由の1つです。

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