カナダ大使館開催 「グレン・グールド・トリビュート 生誕90年、没後40年を迎えて」
カナダ、トロント出身のグレン・グールドは、史上最高のピアニストの一人であり、カナダが世界に誇る思想家、音楽家でもある。そのグールドが脳卒中でこの世を去ってから今年は40年目となる。もし彼が生きていたら今年は90歳になっていたことだろう。
在日カナダ大使館では命日にあたる10月4日にグールドに縁のあるゲストを招き、トリビュート・イベントを開催した。
グールドは生前、いくつかの特別な「何か」でもかなり注目を集めることになったピアニストでもある。たとえば、バッハの演奏だ。その時に彼が座るピアノの椅子もその一つだ。父親の手作りだという椅子は、とてつもなく低く、背中を丸めなければ鍵盤とのバランスが取れない。その独得の姿勢でのグールドの演奏姿は忘れられない。さらには演奏のときは、鼻歌まで歌っていたことも多々ある。
彼は早期にステージから引退し、新しい自分の世界を録音というそれまではクラシックの音楽家には歓迎されていなかった「ツール」に力を注いでいく。今までいわば瞬間芸であった音楽を、「永遠に残る」という新しい分野に導いていった。また、グールドは柔軟な考えを持っており、今でいうLGBTなどの新しい社会の形を受け入れてきた。今の時代を作る先駆者としても知られている。
グールドとは、音楽の天才である他に、10年、20年先を見ていたのではないか。彼の死後40年を経た今、改めて今を生きるひとびとはすでに40年前に世を去ったこのピアニストの芸術性、人生を高く評価している。
このトリビュート·コンサートでは、グレン・グールドゆかりの人々のトーク、演奏もまたとても素晴らしいものであった。しかし、ここで特筆すべきは、新しいテクノロジー、AIを使って、グールドの演奏を再現してみせたことだ。このAIシステムは、AIと人間の共創の可能性を追求するためにヤマハが取り組んだDear Glennプロジェクトによって開発された。
このプロジェクトによって、グールドが演奏した曲の傾向をもとに、AIが再解釈した演奏が披露された。つづいて、グールドが生前演奏したことがなかったクープラン、テレマン、フィッシャーといった作曲家による小品も演奏された。
最新のテクノロジー、録音技術を好んだ彼は、今、生きていたら、どんな演奏をするのだろうか。カナダ大使館とヤマハのコラボにより、ファンが望んでいた回答の一つが示された素敵なトリビュート・コンサートだった。