大使が語る南アの民主主義国家としての歩みと日本との関係

ルラマ・スマッツ・ンゴニャマ駐日南アフリカ共和国大使インタビュー

南アフリカ共和国の発展はとても興味深い。現在、南アフリカは、新型コロナウイルスの感染拡大、グリーン経済への移行という課題の中にある。ルラマ・スマッツ・ンゴニャマ駐日南アフリカ共和国大使は、このインタビューの中で南アフリカが行っている具体的な取り組みについて、さらに日本との経済及び文化的つながりについても自身の考えも述べている。

駐日南アフリカ共和国大使としてのミッションは何でしょうか。

大使としてのミッションは、まず南アフリカと日本の間に強固な外交関係を築くことです。そのミッションは、私がこの職務に就くかなり前に構築された関係を土台としています。両国の間に包括的な外交関係が結ばれたのは、1994年以降でした。1995年7月にネルソン・マンデラ元大統領が来日し、アパルトヘイトとの闘いに貢献した人々を称賛しました。マンデラ元大統領は、ロベン島に収監されていた時、広島の原爆の歴史について読んでいます。マンデラ元大統領はなぜ原爆が投下されたのか、どのような影響があったのか、日本はどのように復興したのかを理解したいと考えたからです。その後、南アフリカは1989年に、世界で初めて自主的にすべての核兵器を廃棄するという決断をするに至りました。

現在、南アフリカと日本の経済外交を強化することを重視しています。政治的レベルでの協力は、二国間、多国間のプラットフォーム双方において非常に強力と言えます。例えば多国間においては、南アフリカは国連安全保障理事会(UNSC)の包括的な改革を強く提唱し、国連を代表するような構成にすることを求めています。日本も同様に、国連安保理の改革を訴えています。アフリカ開発会議(TICAD)に関連しては、近年達成された多くの成果を脅かす一連の課題に取り組むアフリカ大陸全体の経済成長、デジタルへの移行、グリーンへの取り組み、雇用創出を促進するため、日本からの包括的支援となる取り組みを歓迎しています。また、今年のTICAD(第8回アフリカ開発会議)はチュニジアが主催国となりました。南アフリカからは国際関係・協力大臣のナレディ・パンドール博士が代表として参加しました。

この会議では、経済、水と保健衛生、インフラ、観光、科学技術などの分野でいくつかの協定が結ばれました。これらの協定は、日本とアフリカ大陸の協力関係の強固さを明確に示すものです。また、日本貿易振興機構(JETRO)と国際協力機構(JICA)が、国連開発計画(UNDP)及び国連工業開発機関(UNIDO)と共に、日本とアフリカの民間企業間の貿易と投資を強化することを目指した新しいパートナーシップも結ばれました。

日本は、特にトヨタ、日産、三井、日立など多くの企業を通じて、南アフリカ経済に多大な投資を行ってきました。これらの投資についての私の責務は、南アフリカ政府が設定した目標を達成し、双方の経済的利益を最大化することです。しかし、私の使命はそれにとどまらず、人と人との交流や観光の促進も大切です。多くの日本人が南アフリカを訪問してみたいと考えています。しかし、南アフリカの文化や観光、また何が投資先として得られるか、殆ど知られていないのが現状です。

2022年は南アフリカと日本の関係が大きな成功を収めた年でした。2023年はどのような計画をお考えでしょうか?

先日、第13回 日・南アフリカ・パートナーシップフォーラムが日本で開催されました。この時に、南アフリカはパンドール南アフリカ国際関係・協力大臣と林芳正外務大臣が議論を交わしましたが、それはとても勢いのあるものでした。ぜひともこの勢いを持続させてまいりたいです。

また、南アフリカは2022年11月28日から30日まで、Green Hydrogen Summit (グリーン・ハイドロゲン・サミット)をケープタウンで主催するにあたり、シリル・ラマポーザ大統領から岸田総理に招待状が送られました。日本は技術を持ち、南アフリカには豊かな資源があることから、グリーン水素は両国の協力関係を強化する重要な分野と考えられています。両国はグリーン水素の分野でリーダーになることを目指しており、南アフリカはこの分野で日本との協力関係をより緊密にしていきたいと考えています。 例えば、南アフリカに本拠を置くエネルギーと化学の総合企業、サソールは世界各地でエネルギープロジェクトに従事しています。グリーン水素の分野において、日本では伊藤忠商事とともにパイオニア的な存在です。

南アフリカと日本の関係をどのように発展させていきたいとお考えですか?

日本とのビジネスでは、日本は一国につき一品目ずつ市場アクセスの交渉を行っています。そのため、複数品目の交渉を試みることは困難です。日本は常に量より質を重視するため、交渉は長期化します。

以前、新型コロナウイルス感染症が多くの産業、特に観光産業に影響を与えたことがありますが、その困難な時期はどのように乗り越えていらしたのでしょうか?

南アフリカの観光産業は新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって大きな影響を受けました。しかし現在は新型コロナウイルスの感染者数は継続して減少しており、国家として再び観光ビジネスにむけて開放し、世界中からの旅行者を受け入れる準備が整っています。南アフリカへの日本人旅行者数(観光、ビジネス、その他)は、2019年の約28,388人から2020年には5,236人、2021年には1,194人と激減しました。南アフリカは、再び観光ビジネスにむけて開放され、世界各国からの旅行者を迎える準備が整ったというところです。

新型コロナウイルス感染症が観光産業に与える影響を軽減するため、南アフリカ観光局は、関連するステークホルダーと協力して 「観光セクター復興計画(Tourism Sector Recovery Plan))を策定しました。その目的は、観光セクターの回復を支援するために、供給を保護及び刷新し、需要を再活性化させ、実現能力を強化することです。駐日南アフリカ共和国大使館は、南アフリカ観光局と密接に連携し、南アフリカ観光産業の復興に貢献し、日本における南アフリカの知名度を高めると共に、継続的に南アフリカのプロモーションを行うことを目的としています。

南アフリカの教育や男女平等についてどのようにお考えですか?

南アフリカにおける男女平等の問題は、文化、スポーツ、音楽、教育など、社会生活や経済生活のあらゆる側面に浸透しています。1994年に南アフリカが民主化される以前は、国会議員のうち女性はわずか2.7%でした。しかしそれ以降、状況は変わりました。現在、女性閣僚は内閣の41%を占めています。詳細を述べれば、女性副大臣は47%、国民議会は41%が女性という構成です。アパルトヘイトの終焉後、政策変更や女性の権利を発展するために設立された組織を通じて、政治における南アフリカ女性の役割は高まっています。南アフリカの初代副大統領はプムズィレ・ムランボ=ヌクカ=ングチュカ博士は後に国連女性機関の事務局長を務め、事務次官にも就任しています。現在はヨハネスブルグ大学の学長を務めています。

南アフリカ政府は、政治、公共部門、教育の分野で女性のエンパワーメントを大きく前進させてきました。また、女性が活躍できる環境を整備し、経済参加を向上させるための法整備も行ってきました。

The beauty of South Africa

現在、シリル・ラマポーザ大統領の与党党首選に2人の女性が挑戦していますが、これは強固な民主主義の表れと言えるでしょう。女性は制約などにとらわれることなく、『私は大統領になり、この国をよりよく導きたい』と宣言することができます。南アフリカは、社会経済的なエンパワーメントと男女平等の推進・実現という点で、正しい方向に進んでいると言えます。

私はネルソン・マンデラ元大統領やタボ・ムベキ元大統領のもとで、与党の全国執行委員会(NEC)の一員を務めていました。大統領の意向は、国のさらなる発展のために前進していきたいということでしたが、経済がその制約となったことがありました。現大統領は、南アフリカの社会経済状況の改善を重視しています。世界第3位の経済大国であり、南アフリカへの投資額も第5位である日本との強固な関係を育成することにも意欲的です。その意向からも、私のミッションは、現在南アフリカと日本の間に存在する友好的な両国関係が、南アフリカがまさに直面している社会経済的な課題にプラスの影響を与える結果をもたらすようにすることです。

ンゴニャマ大使にインタビューをご快諾いただき、感謝を申し上げます。

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