かこさとし展 子どもたちにつたえたかったこと

日本を代表する絵本作家かこさとしの全貌をたどる展覧会が、現在、渋谷Bunkamura

ザ・ミュージアムで開催されている。

渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中

日本の子どもたちのほとんどは、かこさとしの作品を読んでいるはずだ。

かこさとしは、1926年生まれ。多感な中学生時代に戦争を体験し、レオナルド・ダ·ヴィンチに影響を受け、一度は航空士官を目指すが、強度の近視のために諦める。その後、東京帝国大学工学部応用化学科入学するが三重県に疎開し、終戦を迎えた。その間に、東京の自宅は東京大空襲に襲われ消失していた。

戦後は世の中の価値観が全く変わってしまい、かこさとしは絶望感に見舞われる。しかし、彼はその時代に「セツルメント活動」に出会う。「セツルメント活動」とは、「人間として平和を愛し」、「苦しむ人々のために献身的に尽くす」、「生活の苦難打開に資することを念願する」という理念を持っていた。その当時のことを彼は、「あてもなく彷徨っていた僕の背中をゆっくり前に押してくれた」と語っている。この考えが、後のかこさとしの活動には大きな影響を与えていく。

「セツルメント活動」に参加したかこさとしは、工場労働者の子どもたちの為に自ら紙芝居を描き、上演している。いずれの紙芝居も、労働者の生活を反映し、どこか物悲しい。その活動を経て、1959年の『だむのおじさんたち』で絵本作家デビューし、かこさとしは次々と名作を生み出していく。

この展覧会には「だるまちゃん」「からすのパンやさん」など、日本人なら一度は手にしたことのある絵本の原画、デッサンが数多く展示されている。その一つ一つは驚くほどち密に描かれている。科学を学んだかこさとし独自の自然の観察眼、工場や歴史に対する忠実な描写が反映されている。また、働くことの尊さ、平和、共存、愛情などがすべてに共通するテーマだ。そのテーマは決して押し付けがましいものではない。しかし、絵本を読んだ子どもたちの心に、自然に、何か温かいものをもたらしていることに気づく。

展覧会最後に展示されている「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜」(生命図鑑)は圧巻だ。これはかこさとしの最期のメッセージでもあり、曼荼羅でもある。かこさとしがすべての人に伝えたかったことは、生命はみな同じく尊いということではないか。

よりうつくしく

よりたくましく

よりすこやかに

かこさとしが残したメッセージは実にシンプルだ。だれもがそうありたいと願うが、その実現はどんなにむずかしいことだろうか。

この展覧会で、改めて平和と平等、人権、尊厳の大切さに出会える。

開催期間:2022/7/16(土)~9/4(日)  ※7/26(火)休館

会場: Bunkamura ザ・ミュージアム

開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)

毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる場合がございます。

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