世界の西洋名画を再現 大塚国際美術館のミッションと世界への貢献
徳島県の鳴門公園内にある大塚国際美術館には、日本のみならず世界からも多くの鑑賞者が訪れる。 この美術館は世界26ヵ国の西洋名画約1000点を陶板で原寸大に再現し、展示している。 名画の制作に使われている陶板は約1300度の高温で焼かれているため、2000年に亘って変色の心配もない。その為、展示されている名画の数々には手で優しく触れることもできる。 それぞれの名画を所蔵する美術館などから許諾を得て再現しているが、画家のタッチ、絵の具の盛り上がり方なども詳細に再現されているのは驚愕だ。 大塚国際美術館の取り組みは、こうした世界の名画を手に取るように間近で鑑賞することもあるが、その他にも、既に失われてしまった名画や祭壇画の復元、修復前と修復後の違いを比較鑑賞できる展示室がある等、美術史上の重要なポイントに大きく貢献していることもとても多い。 大塚国際美術館にはエル・グレコのドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院の祭壇衝立も復元されている。 非常に残念なことに、オリジナルの衝立は19世紀初頭のナポレオン戦争で破壊されてしまった。6点あった祭壇画は散逸してしまい、現在は《受胎告知》《キリストの洗礼》《キリストの磔刑》《キリストの復活》《聖霊降臨》の5作品は、スペインのプラド美術館に所蔵されている。 しかし、《羊飼いの礼拝》はルーマニア国立美術館に所蔵されているので、現物を一度にみることは不可能だ。しかし、大塚国際美術館ではこの祭壇画は原寸大で復元され、エル・グレコがその円熟期に描いた通りに展示されている。 ゴッホの《ヒマワリ》の展示も素晴らしい。花瓶に入った《ヒマワリ》をゴッホは7点描いたことでも知られる。現存する6点は以下の美術館等に収められている。 ノイエ・ピナコテーク(ドイツ)、ナショナルギャラリー(英国)、SOMPO美術館(日本)、フィラデルフィア美術館(アメリカ)、ゴッホ美術館 (オランダ)、1点は個人蔵。 幻の《ヒマワリ》と呼ばれる作品は1945年に兵庫県芦屋市を襲った空襲により焼失し、その姿を伝えるのは残された「セザンヌ・ゴオホ画集」であった。大塚国際美術館では東京都にある武者小路実篤記念館の協力でその現存する画集を基に正確に幻の《ヒマワリ》を再現し、ここでは7点全部を一堂に鑑賞することができる。 レオナルド・ダ・ヴィンチが修道院の壁にテンペラで描いた《最後の晩餐》が、長い期間をかけて大規模な修復が行われたことは世界的にも知られている。大塚国際美術館では《最後の晩餐》の修復前と修復後の二点を展示し、その違いを見比べることもできる。 こうした美術史上の大きな貢献を日本の企業が行っていることは素晴らしい。 大塚グループ創立75周年を記念して開館した大塚国際美術館は、2023年3月21日に開館25周年を迎えた。 大塚オーミ陶業の特殊な技術で再現された世界の名画は、これからも世界の人々を魅了し続けることだろう。また、世界に日本の企業のこうした事業を広く知ってもらいたい。 【関連記事】