ラトビア発 革新的ピアノを紹介
有名な音楽家を輩出していることでも知られる芸術大国ラトビアから、革新的なピアノが日本に紹介された。 初上陸となったのは、クラビンス・ピアノの中でも特に人気の高いモデル「ウナ・コルダ(UnaCorda)」だ。これは、2014年ドイツの有名なミュージシャン・プロデューサーのニルス・フラムとのコラボレーションにより、64の鍵盤を持つ小型ピアノとして発表された。 数あるクラビンス・ピアノの中でも、ウナ・コルダシリーズは人気が高い。ウナ・コルダはオープンデザインとなっており、自分で音色、音量の調整も可能だ。 このピアノで特筆すべきは、響板と通常使用される鉄の鋳型の代わりにステンレスフレーム製のフレームが採用されていることだ。それによって各音がただ1本の弦で発音される。重量は70キロ程度と、従来のピアノに比べて格段に軽く、調律も簡単にできるという。 こうした新しいコンセプトを持ったピアノは、ドイツ生まれのラトビア人ピアノ製作者、デヴィッド・クラビンスによって製作された。クラビンスは最高の音色を求めてピアノを作り始め、1987年には当時最⼤のピアノの「MODEL 370」を作成している。 ⾼さ3メートル・総重量2トンという超巨⼤ピアノで、ピアニスト2階の⾼さで演奏する構造となっている。まるでパイプオルガンを思わせるような大きなピアノだが、この大型ピアノは、通常のピアノには再現できない迫力の低音や、暖かい繊細な中・高音を出すことができる。完成当時、世界最⼤のピアノとして、初のギネス記録樹立となった。 彼が日本のために製作した画期的な新型のピアノは、東京オリンピックの開催時に、ラトビア選手のホストタウンを務めた富士市でも紹介された。 「市民一人一人が主役」をキャッチフレーズに、富士市民総出で楽しむ夏の一大イベントである「富士まつり」がその好機となった。今年は富士市が東アジア文化都市に選出されていることもあり、富士まつり2023はその認証プログラムの一環として紹介された。 小型でかわいらしいピアノであることも親しみやすく、多くの子供達も実際に鍵盤に触り、その音色を味わったという。 また、駐日ラトビア大使館においてもクラビンス・ピアノは紹介された。両方の機会に、即興演奏を得意とするピアニストの坂元勝志が演奏を披露し、通常のピアノとは違う音色、独得の世界観を紹介した。 スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハ、カワイなどの世界的ピアノメーカーが殆どのシェアを占めているのが音楽業界の現実であり、こうした新しいコンセプトのピアノが出てくることはとても珍しい。新しいピアノにより、新しい音楽が生まれてくることも期待できる。ラトビア発クラビンス・ピアノの将来に期待したい。