TICAD8まで1ヶ月:モハメド・エルーミ駐日チュニジア大使にインタビュー

TICAD8(第八回アフリカ開発会議)を前に、モハメド・エルーミ駐日チュニジア大使にインタビュー

世界中で起きている新型コロナウィルス感染拡大ですが、この課題にはチュニジアはどう対応してきましたか?

駐日チュニジア大使館としては、世界的なこのパンデミックによって引き起こされた課題を克服するために最善を尽くしてきました。しかし、最初は困難があったと言えます。

現在も外交に携わる全ての人々、また各国にとって難しい状況といえます。チュニジアは、新型コロナウィルス感染拡大が始まった当時、2020~2021年を任期とする安全保障理事会の理事国でした。任期中、チュニジアは、いかなる武力紛争も停止し、新型コロナウィルス感染拡大と闘うために、国際社会の一員として最大の努力も捧げるという決議案をフランスと共に提出した主導国の1つでした。この決議案は全会一致をもって可決されました。 

チュニジアでの状況ですが、当初はそれほど深刻ではありませんでした。私も2020年夏に家族と一緒にチュニジアに戻ることができたことを覚えています。当時はまだ人々はマスクを着用しておらず、まるで何事もないかのようであり、社会状況はかなり正常に近いものがありました。しかし、2021年の夏には感染のピークが訪れ、本当に深刻な状況に陥りました。その状況は南ヨーロッパ、イタリア  、フランスに匹敵し、毎日200人前後の死者 がでました。 

そのため、ワクチン接種の推進に軍隊を動員し、必要な措置を講じました。幸いなことに、こうした状況を克服することができ、現在は正常な状況に戻っています。 感染者がゼロの日もあります。国境は再開され、予防接種を受けた人は制限無しで、またワクチン未接種の人はPCR検査を受けるだけで入国できます。チュニジアはすでに世界中から、特にヨーロッパから100万人以上の観光客を受け入れています。 

駐日チュニジア大使館としては、他のすべての大使館と同様に、コロナ禍に応じた活動を試み、最新のテクノロジーがどれほど重要であるかを理解しました。我々は、今年8月27、28両日にチュニジアで開催される第8回アフリカ開発会議 (TICAD8) の準備プロセスとして、日本の政府初め関係各所と、複数のオンライン会議を開催しています。チュニジアが在京アフリカ外交団 (ADC) の一員であることはご存じの通りです。 

チュニジアは世界経済フォーラムでは、アフリカで最も競争力のある経済国として言及されました。チュニジアの経済を際立たせる特徴や日本にとって商業的、ビジネスの関心となるものは何でしょうか。

2010年12月、チュニジアで第2回日本・アラブ経済フォーラムが開催されたことはご存じでしょう。チュニジアはアフリカとアラブ・地中海諸国の一員であり、その文化の中にはさまざまな側面を持っています。その中でチュニジアは常にこの地域に対する日本のイニシアティブを推進し、支援してきており、アラブ諸国中で、このフォーラムの初のホスト国となりました。100人以上の日本の経済界の代表をお迎えし、素晴らしい成功を収めました。

「日本・アラブ·ビジネス·フォーラム」は、サミットではなく、閣僚級会談です。当時、日本側の代表団は外務大臣と経済産業大臣がともに議長を務め、強力なビジネス代表団が参加しました。今回は、岸田首相が日本の代表団の議長を務めることを期待しています。

先ほども申し上げましたが、チュニジアは2つの大きな会議を準備しています。まず、アフリカの各国首脳が集まる全体会議、サミットです。岸田総理、チュニジア大統領、共催の国連事務総長、UNDP(国連開発計画)局長と、今年のアフリカ連合の議長国であるセネガルも参加します。非常に重要な本会議で、首都のチュニスで開催される予定です。 

2番目の重要なイベントは、主要ホテルで開催されるビジネスフォーラムです。チュニジアでの商機、また、日本、チュニジア、アフリカ間の三角協力を展開するために、日本のビジネス関係者がチュニジアを訪れることを期待しています。

ご指摘の通り、チュニジアの経済は非常に競争力を持っていますが、新型コロナウィルス感染拡大の影響、ロシアのウクライナへの侵攻もあり、厳しい状況下にあります。ご質問にお答えするなら、経済資産がチュニジアの経済競争力を高めていると言うことができます。

これは日本とよく似ています。日本同様、チュニジアも豊かな天然資源には恵まれておりません。ですがチュニジアでは、それを神からの恵みと考えています。なぜなら、豊かな天然資源がないからこそ、日本のように人的資源に投資するのです。チュニジアの発展の柱はチュニジア共和国初代大統領であったブルギバによって定められました。彼は次の3つの柱を国の礎としました。

  •          第一の柱: 全ての人に教育を 
  •           第二の柱: 全ての人に健康を
  •           第三の柱: 女性の参画とリーダーシップを

これらの柱は、チュニジアモデルと呼ばれる財産の一つです。

また、第2の財産と言えるのは豊かな自然です。チュニジアは地中海の中心に位置し、戦略的に恵まれた立地にあります。これは私たちにハブとしての役割を与え、とりわけ日本、ヨーロッパ、アラブ諸国、そしてアフリカの国々にとっての、一種の玄関口となっているのです。

ご存知の通り、1995年にチュニジアは地中海沿岸の国として初めてEUと自由貿易協定を結びました。

そうした経緯があって、日本企業はすでにチュニジアで事業を開始しており、その存在には非常に感謝しています。現在、チュニジアには22社の日本企業が進出しており、約8,000人の雇用を創出しています。日本企業にとっては、ハイスキル人材を低価格で雇用できること、及びチュニジアの立地的なメリットによりアフリカ、ヨーロッパ、およびアラブの市場へのアクセスが容易になるという点で利点があります。

第3の財産は、三角協力の可能性です。チュニジアの存在がさまざまなアフリカの兄弟国、とりわけフランス語圏の国々で非常に高く評価されていることはご存知のとおりです。ブルキナファソ、マリ、セネガル、ジブチ、その他多くのアフリカの兄弟国と話をすると、彼らはチュニジアの専門性を本当に高く評価しています。日本企業と我々は双方に利益を得つつ、インフラプロジェクトはもちろん、医療、新技術、再生可能エネルギーなど、多岐に渡る分野で、それらを必要としている国々と共に協力する大きなチャンスがあります。

チュニジアは、モザイクアートや古代の文化財で有名ですね。この素晴らしい作品や、今年取り組んでいる文化交流プロジェクトについて教えてください。

このモザイク画の豊かさは、我々の文化や文明の豊かさの一部でもあると言えます。チュニジアは古代文明の国です。カルタゴは紀元前814年にフェニキア人によって最初の港として建設されました。もちろん世界史においても、チュニジアは非常に重要な役割を担っており、ポエニ戦争、ハンニバルなどは、日本人にとっても馴染みがあると思います。 私たちは、教養が高く好奇心旺盛な日本の皆様に向けて、あらゆる機会を使って専門家にチュニジアの歴史について話してもらうようにしています。

チュニスのバルド国立博物館には、世界中で最も豊かなモザイク画のコレクションが所蔵されています。その中に「ネプチューンの勝利」というモザイク画がありますが、そのレプリカを大使館の入り口に置いています。歴史や文明に興味のある方は、ぜひともバルド博物館を訪問してみてください。日本の方々がチュニジアを訪れ、その豊かさを発見することは私たちにとっても大きな喜びです。

また、7つのユネスコ世界文化遺産があります。これらの文化遺産は、カルタゴ時代のみならず、チュニジアにおけるローマ時代(第3次ポエニ戦争でローマがチュニジアに侵攻すると、チュニジアの北部はローマ時代となった)の豊かさも反映しています。

そのひとつ、チュニジア北部のドゥッガ(Thugga)遺跡は、北アフリカでも保存状態が良好と言えるローマ遺跡です。また、ケルアン、スースのようなイスラム時代を含む他の文明や時代の遺跡もあります。また、首都チュニスの旧市街は、歴史好きの人ならぜひとも訪れてみる価値のある世界遺産です。

インタビューに答えてくださったエル―ミ大使に心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。

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