名作《ゲルニカ》を身近に
名作ゲルニカを身近に「ゲルニカが来た!大迫力の8K映像空間」
2022年8月16日(火)~8月28日(日)NTTインターコミュニケーション・センター【ICC】で開催
ピカソの名作《ゲルニカ》。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、これほど注目を浴びた名画はない。
ピカソはその生涯において4度の戦争を体験している。米西戦争、第一次世界大戦、スペイン内戦、そして第二次世界大戦だ。ピカソは、戦争そのものを描くことはなかったが、内戦ぼっ発から第二次世界大戦の終了まで、彼は絵筆を武器に見えない敵と戦い続けた。ピカソは1945年3月24日「レ·レトル·フランセーズ」で掲載されたインタビューで、「絵画は部屋を飾るために描かれるのではない。それは攻撃と、敵に対する防衛のための闘いの武器である」とも答えている。
1937年4月にスペインのゲルニカはドイツ空軍による大規模な爆撃を受ける。それを知ったピカソはパリ万博に展示する作品のテーマにこの《ゲルニカ》への爆撃を選んだ。
《ゲルニカ》は現在、スペイン・マドリードの国立ソフィア王妃芸術センター美術館に展示されている。《ゲルニカ》は門外不出だ。それはスペインにとって「最後の亡命者の帰還」という意味もあるだろう。しかし、制作から1958年までの間、各地での展示、梱包を繰り返したため、キャンバスは劣化し、ボロボロの状態になっている。それが《ゲルニカ》が門外不出となった大きな要因だ。
その《ゲルニカ》を現地に行かなくても鑑賞できるよう、NHKとICC(NTTインターコミュニケーション・センター)が協働し、325インチの8K高精細映像による上映を実現させた。監修には日本のスペイン美術の重鎮、早稲田大学名誉教授の大高保二郎氏があたった。
8K画像で再現された「門外不出の世紀の傑作」は余りにも素晴らしかった。踏みつけられ、傷ついた人々、苦しむ馬、母に抱かれた息絶えた赤ん坊、、、全てがありのままに再現され、更には肉眼では気付かない詳細な部分までも見ることができる。この大きな画面を通して、まるで《ゲルニカ》に抱かれるように、この傑作を鑑賞し、ピカソがなぜこの作品を描いたかも肌身をもって感じることができる。
8Kの映像空間はどこででも再現できるのだろうか。もしそうであれば、日本のみならず、世界各地でこの《ゲルニカ》を再現してほしい。この8K画像を通じて、人々は戦争の愚かさを知ることができる。現代においては、マスターピースを移動させるか、自分自身でその場に赴き鑑賞するだけではなく、こうした手法でも、芸術に真摯に向き合うことができる。
芸術とは形を変えるが、いつの時代も人々の意図と時代を反映する媒体だ。
<関連動画>
NHKアーカイブス(https://www.nhk.or.jp/archives/museum/guernica/)で本展関連動画を公開中