日本画家・太田慧香個展『「共に生きる」-自然の寄り添い』

日本画家・ 太田慧香個展『「共に生きる」-自然の寄り添い-』

東京・セイコーハウス銀座ホールにて開催中(9月11日迄)

古典的な技法で美しい花鳥風月を描き続けている日本画家、太田慧香の個展が今、訪れた人々に深い感動を与え、高い評価を受けている。

前回の太田湘香との二人展から3年という時間を空け、満を期しての初の個展開催となった。その間には、母であり日本画の師でもあった太田湘香を亡くし、また、新型コロナウィルス感染拡大という予想もつかない事態にも遭遇している。そんな中で、太田慧香が改めてみつめたのは「自然の偉大さ」「寄り添う自然」であり、その自然と「共に生きる」というあり方だったのだろう。

セイコーハウス銀座ホール(旧 和光本館)にて開催中の個展『「共に生きる」-自然の寄り添い-』より
セイコーハウス銀座ホール(旧 和光本館)にて開催中の個展『「共に生きる」-自然の寄り添い-』より

作品には、太田慧香が抱き続けている「自然への畏敬」と共に深い愛と真摯に芸術に向き合う力強い信念が感じられる。特に、四曲一双の屏風「深山幽谷」は見る人の心を打つ。将来、この作品はきっと彼女の代表作になるに違いない。木々が生い茂る深淵な山々には、湧き上がるような明るい光が湧き上がってくるようで、それはあたかも「明けない夜はない」と、不安の中にいる人々にまだ見えぬ希望を語り掛けるようだ。

日本画家・太田慧香個展
日本画家・太田慧香個展
深山幽谷」と太田慧香先生
「深山幽谷」と太田慧香先生

太田慧香は小さな生き物にも優しいまなざしを注ぐ。稲穂にとまる雀、コスモス、紅葉などの間に遊ぶルリビタキ。どれも愛らしく心安らぐ。しかし、稲穂からおちた米をついばむ、正面を向いた雀のまなざしは、自然に生きることの厳しさを物語るかのように強く、たくましい。

稲穂にとまる雀 豊かな秋
稲穂にとまる雀 豊かな秋
「柿に小鳥」《A small bird on a persimmon》
「柿に小鳥」

今回の展覧会の作品には、扇、ストールなどと並んで、日本の住宅にも飾れるような小品もいくつか出展している。伝統的な表装も多いが、アクリルなどの新しい素材を使い、立体感溢れるモダンな表装には心惹かれる。こうして現代に息づきつつ、太田慧香の描く花鳥風月は、日本の伝統美を現代に伝えているのだと思う。

日本の伝統美を現代に伝える美しい扇子
日本の伝統美を現代に伝える美しい扇子
「銀杏」 太田慧香個展より
「銀杏」太田慧香個展より

ふらりと立ち寄っても癒される。見る覚悟で行っても満足できる。そんな素晴らしい個展だ。

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