リカルド・G・ロハス駐日チリ大使閣下 インタビュー

日本にとってのチリの魅力とは

世界で最も国土が南北に長い国の一つと言えばチリが思い浮かぶ。その他、チリに根付いているものと言えば、家族の強い絆、美食、もてなしの心などが挙げられる。

駐日チリ大使リカルド・G・ロハス大使閣下はこのインタビューにおいて、日本で人気のあるチリ料理、チリ女性の地位向上への支援と進歩、青少年育成のための様々なプログラム、さらにチリで人気の観光名所について語っている。

リカルド・G・ロハス大使は、外交官として40年以上に亘るキャリアを持ち、2021年7月に駐日チリ大使に着任した。


質問: 大使のキャリアについて教えていただけますか。

私は外交官であることに感謝し、光栄なことと感じています。チリの代表として活動しつつ、さまざまな場所や文化に触れることは大きな刺激になります。私が着任した国、場所の人々と特別な絆を持ち続けており、その多くは生涯の友となりました。これはまさに贈り物と言えます。外交官としてチリ外務省で38年近く勤め、8カ国(ニュージーランド、ポーランド、米国、ペルー、ウルグアイ、コロンビア、クロアチア、日本)で生活してきた今、私の心は感謝の気持ちで一杯です。

質問:  チリ産の食品はすでに日本では有名ですが、改めてどのような食品が輸入されているのかを教えていただけますか。

サーモンやマスなどの魚介類、ウニ、ムール貝、イカ、タコ、アワビ(ロコ貝)、海藻類(コチャユーヨ)などがあります。また、ブドウ、サクランボ、ブルーベリー、キウイなどの果物、豚、鶏、羊、牛(タンなどの内臓が中心)などの肉類もあります。

もちろんワインも有名であります。その他のアルコール飲料としては、チリ産のピスコ、ジンなども加わりました。2021年、2022年の有楽町交通会館マルシェにおいて、オリーブオイル、ハチミツ、ローズヒップティー、ドライフルーツなどの加工食品は大成功を収めました。さらに、より産業寄りの製品では、トマトペースト、果汁、冷凍フルーツと野菜、レモン、ブドウ、さまざまな種類のベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ブラックベリー)、アスパラガスなどがあります。

質問:今後、日本で大ヒットしそうなチリ産の食品は何でしょうか?

チリは世界でも有数の果物生産・輸出国であり、果物は今後日本市場での存在感を高める可能性を秘めています。

フレッシュなブドウ: 最近、チリ産のブドウが日本市場で注目されているのは、品種の多様さによるものです。現在、日本には30種類以上のチリのブドウが輸入されています。

フレッシュなチェリー :果肉が厚く、濃い赤色で味が濃く、冬にぴったりの果物です。11月から2月中旬にかけて旬を迎えます。その時期はちょうどクリスマス、年末年始、バレンタインデーなど、赤を基調としたイベントと重なります。

ブルーベリー: ブルーベリーは大粒で果肉が引き締まっており、しっかりした味をしています。フレッシュの他、冷凍輸入されています。

キウイフルーツ: 日本はチリからもキウイを輸入しています。2021年にスーパーマーケットチェーンのイオンと、2022年にはコストコと生協でチリ産キウイのキャンペーンを展開いたしました。そのキャンペーンでは、その品質の高さが消費者から高く評価されています。

レモン:果肉がしっかりしており、酸味は比較的マイルドです。昔からスーパーでよく見かける商品ですので、チリ産と知らずにすでに買っている人も多いはずです。

 豚肉:日本市場において特にHORECA(ホテル・レストラン・ケータリング)の分野では、すでにチリ産の豚肉の品質が高く評価されています。2月21日にチリで発効するCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を受け、競争力が高まりますのでさらなる輸出拡大が期待されています。

羊肉: 2021年に初めて輸入され、2022年からはブランディングのためのプロモーションが開始されました。そのせいか、食通の人々の間では「チリ産パタゴニアラム」がグルメ食品として認知されるようになりました。生産量も輸出量もまだ少ないのですが、ニッチなスター商品として重要性を増しています。

チリのハチミツも同じくニッチな産物です。チリではその国土に自生する土地固有の植物に由来するさまざまな種類のハチミツが生産されています。たしかに大量生産国と価格競争するには不向きです。ですが、ウルモやキジャイなどのハチミツは、高い抗菌力を持つことから、近年ではますます国際市場で注目されるようになってきています。日本における健康食品市場の拡大に伴い、チリ産のハチミツが日本市場のスター商品になる日も近いでしょう。チリ産のはちみつは、価格競争に参加するつもりはありませんが、CPTPPによって関税が25.5%から9.5%に引き下げられる恩恵を受けることもできるでしょう。

質問: チリ産サーモンは、日本ではすでに高品質なサーモンとして人気を博しています。そこに至るまでにはどのようなご努力があったのでしょうか。

イオン、CGC、成城石井といった日本の大手スーパーマーケット・チェーンと共同で、チリ産サーモンが日本で販売されています。チリがサーモンの主要供給国の一つであることをエンドユーザーに認識してもらうため、さまざまなキャンペーンを展開しました。また、日本は世界で最も品質に厳しい国の一つであることから、チリ産サーモンの存在感を高めるために、品質の維持・向上に大きな努力が払われてきました。

チリでサーモン産業が始まった1980年代、輸出の大半は冷凍のHG鮭(HinG=頭と内臓だけを取り除いた加工度の低い製品)でした。しかし数年後、冷凍塩蔵ヒレや冷凍刺身用ヒレなど付加価値の高い製品の生産が増え、それに伴って日本市場での人気も高まっています。この40年の養殖技術の進化により、マス類に関しては通年水揚げが可能になりました。

質問:ところで、チリは女性の社会進出のためにどのような支援をしていますか?政府は女性の社会進出を支援する政策をとっているのでしょうか?

チリでは 2015年、国家女性事業局(1991年設置)に代わり、女性・ジェンダー平等省が設置されました。その主な目的は女性、多様性、ジェンダー不一致に対するあらゆる種類の暴力や恣意的な差別に対処、予防、および根絶することです。また、そうした女性に対する暴力への対処としては、国家機関や民間機関の行動に影響を与えること、女性の平等な参加、経済的エンパワーメント、自主性の改善、性的・生殖に関する自主性の条件強化、未払いの家事・介護の認識、可視化、そしてジェンダー平等に敬意を払い、認識する文化を普及させることがあります。

さらに、扶養義務や養育費の恒久的な支払いメカニズムを確立する「親としての責任と扶養債務の効果的な支払いに関する法律」(2022年)など、一連の法改正が推進されています。被害者、その住居、職場、学校への接近が禁止された場合、テレマティックス監視による監督を確立する「Ley de Monitoreo Telemático」(テレマティックス監視法、2021年)、「Ley que modifica el Código Penal para tipificar el delito de acoso sexual en espacios públicos」(公共の場におけるセクハラ罪を分類するための刑法修正法、2019年)なども多数あります。

現在、一例としては、同一労働に対する同一賃金、女性であることを理由にした殺人の被害者とその家族に有利な保護と包括的賠償の体制に関するいくつかの法律がチリ議会で審議中です。

質問:  前大統領は女性の方でしたが、チリにおいては女性の社会的地位は認知されていますか?国会議員の中で何割が女性議員でしょうか?

チリ女性の社会的役割ですが、歴史的に見れば伝統的な性別役割分担と家父長制文化の影響を受けてきました。しかし20世紀を通じて、政治など多くの場面で女性の社会参画が進み、憲法に男女平等と性差別の禁止が規定されるに至っています。

政治の分野では、1934年に女性の選挙権が確立(地方選挙)、1949年に強化(全選挙)されました。2015年には選挙制度が改正され、より平等な議会構成のために各政党の立候補者における性別枠が設けられました。

これに関しては、政党や選挙盟約が登録する候補者総数のうち、男性候補も女性候補も60%を超えることはできません。

その影響は次の数字が示すように非常に好ましく、下院の女性代表は2017年の選挙では22.6%だったのが、直近の選挙(2021年11月)では35.5%になりました。一方、上院では、女性議員の割合が23.5%から24%に増加しました。現在、内閣では、24人の大臣中14人(58.3%)、39人の副大臣中19人(48.7%)が女性です。

質問: まだ30代という 現大統領は世界最年少の国家元首と伺っています。日本はまだ年功序列がありますが、チリは若者の社会進出の機会は多いのでしょうか?若者の才能を伸ばす援助をしているのでしょうか?

ガブリエル・ボリック大統領は36歳でチリ史上最年少の大統領です。チリ南部の故郷プンタ・アレナスの中学校で政治家としてのキャリアをスタートし、その後、チリ大学の法学部と同大学の学生連盟に所属し、活動しました。その後、副大統領に2回当選した後、2021年12月に行われた大統領選の2回目の投票で当選しました。

チリでは、社会開発・家族、国立青年機関省のもと、次のような若者向けのプログラムがあります。

1.  Programa Creamos(私たちが創造するプログラム)は、若者が地域社会の問題に変化をもたらすためのアイデアを発表し、審査の後、各州の資金援助を受けて実施することができるプログラムです。

2.  Programa Voluntariado Patrimonial(文化遺産ボランティアプログラム)は、国内の各地域の文化的アイデンティティに焦点を当て、ボランティアの機会を通じて文化遺産の強化に若者の参加を奨励することを目的としたプログラムです。

3.  Subsidio al Empleo Joven(若年者雇用助成金):雇用主を支援し、若年労働者の給与を改善するために金銭的助成を提供いたします。

4.  Bono Logro Escolar(学業達成賞)は、最も弱い立場にある人口の30%に属する小中学生のうち、進級時に成績優秀の30%以内の生徒を対象に設立された賞です。

5.  Subsidio Previsional a los Trabajadores Jóvenes (若年労働者のための社会保障助成金) は、若年労働者の年金条件を改善することに特化した目的をもつ毎月の金銭拠出プログラムです。)

質問:   チリの観光は、今後日本人の関心を集めると思います。どのような観光地があるのかご紹介ください。また、チリの料理もいくつかご紹介いただけますか。

チリは南太平洋に位置し、南北に 4,500km を超える細長い国です。 北は乾燥したアタカマ砂漠、南は森林に覆われた湖沼地帯、南極に近いパタゴニアのフィヨルドと氷河など、多様な自然環境を誇っています。 アンデス山脈はアルゼンチンとの東の国境を形成し、高さ 6,000 メートルに達する山々が数多くあります。 また、モアイ像で有名なイースター島も人気の旅行先です。

ここでチリで訪れるべき有名な観光地を紹介します。

  • アタカマ砂漠:チリの北部に位置する、世界で最も乾燥した砂漠です。
  • セロ・サン・クリストバル(サンチアゴ):山頂からはサンチアゴの街全体が見渡せます。
  • バルパライソ:2003年に世界遺産に登録されました。急斜面や石段が続く山岳地帯であるため、市内には数機のリフトが設置されています。
  • トレス・デル・パイネ国立公園(パタゴニア):標高3,000m近い岩峰が特徴です。
  • イースター島国立公園:約1,000体のモアイ像があり、1995年に世界遺産に登録されました。

なお、チリのワイナリーによりますと、パンデミック期に、主にチリ人やブラジル人などの中南米諸国を対象としたワインツーリズムが目覚ましく発展したとのことです。パンデミック以前にも中国からの旅行者の訪問がありましたが、日本でのワイン消費を考えますと、今後、日本人にアピールすべき分野だと思います。

ロハス大使、このたびはインタビューをご快諾いただき、ありがとうございました

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