Jorge Toledo Albiñana

スペインと日本の架け橋となって

インタビュー:駐日スペイン大使 ホルヘ・トレド・アルビニャーナ閣下

日本とスペインは、強固な友情を育んできたと共に、本質的な価値も共有している。駐日スペイン大使は、日本での外交官としての駐在の意味、キャリアと、大使自身が愛してやまないスペイン·日本という二つの国のより大きな協力と経済発展ついて、詳細な見解を語った。

Q:スペイン駐日大使として、どのような時間を過ごされましたか。

まず、駐日スペイン大使として勤務することは私の夢であり、その夢がかなったと言えます。25年前に日本での最初の駐在を経験しました。東京の駐日スペイン大使館に一等書記官として駐在しておりました。その駐在も忘れられない印象を残しましたが、この度は、本当に夢が実現したと言えます。大使として駐在した期間に築き上げてきた経験と、この素晴らしい国で育んできた友情を今後も大切にしてまいります。

Q:駐日大使としての駐在期間で、最も印象に残った出来事は何でしたか?

今、駐在期間を振り返ってみると、ネガティブな印象としては確かに新型コロナウィルス感染拡大(COVID- 19)でした。ポジティブな面では、今上陛下の即位礼正殿の儀に関わる一連の儀式でしょうか。それは最も記憶に残る出来事の1つだったと思います。スペイン国王フィリペ6世とレティシア王妃がこのために来日いたしましたし、今上陛下の即位の儀式に、国王夫妻と共に私も同行できたことはとても光栄に思っています。これは非常に印象的でした。

もう一つの注目すべきイベントは、2019年に大阪で開催されたG20サミットでした。スペイン首相のペドロ·サンチェスが来日いたしましたので、私も同行し、出席いたしました。もちろん、2021年に開催された東京オリンピックも間違いなく素晴らしかったです。無観客での開催でしたが、幸運にもそのオリンピック開催時に、この日本で大使を務めることができました。スペインオリンピック委員会から特別な認定を受けておりましたので、直接競技を見ることができたこともまた光栄でした。この得難い特権もまた忘れられません。

また、実は25年前に長野で開催された1998年冬季オリンピックは、当時、一等書記官として出席することができました。私は当時のスペイン国王ファン·カルロス一世とソフィア王妃と一緒にこの大会に参加いたしました。つまり、日本での二度の駐在の際に、日本で冬季オリンピックと夏季オリンピックの両方を経験することができたということです。これは本当に幸運でした。

概して、日本では素晴らしい思い出を作ることができたと思います。私はこの国、人々、そして文化を心から愛しています。日本と日本がもたらしたこうした経験は、思い出としていつも私の心の中に生きています。

東京都内にある大使公邸にて

Q:駐日スペイン大使に就任なさる前は、欧州連合の国務長官として勤務していらっしゃいました。これは非常に重要な立場ですが、ヨーロッパを代表する責任を感じることはおありでしたか?

はい、まさにその通りです。セネガルでも大使として3年間の任務を経験しておりますが、それ以外では、私の外交官としてのキャリアは、アジアと欧州連合の二つが重要です。

私は33年以上に亘って外交の経験を積んでまいりました。その半分以上が欧州連合の問題にかかわることであり、そのことに専念してきています。駐日スペイン大使に就任する前の最後のポストは、副大臣にも例えることができる欧州連合の国務長官でした。多くのEUメンバー国では、このポストは「ヨーロッパの大臣」とも呼ばれています。

それ以前は、首相官邸の欧州担当局長を務めていました。こうした経験からも、私は自分自身をヨーロッパ人であり、ヨーロッパ人と言うだけでなく、西ヨーロッパを統一するヨーロッパ人だと考えています。

私はドイツ生まれで、母はフランスで生まれました。基本的に、私はスペイン人であり、スペインの外交官でもあります。したがって、私は自分自身を西ヨーロッパ統一主義の親ヨーロッパ人だと思っています。

外交について

Q:スペインと日本の両国は、互いに何を学ぶことができるのでしょうか?

スペインと同様に、日本は非常に古い国であり、両国は人権、法の支配、民主主義などの共通の重要な価値観を共有しています。その結果、スペインと日本はよき友であるだけでなく、非常に良好な関係を維持しています。スペインと日本はこのように価値観を共有しているので、国際舞台でこの価値観の共有を守っていくことができています。

今の日本は世界で最も重要な地域のひとつである極東において、非常に重要な国だと考えています。

特に、スペインは日本を、極東アジアの自由貿易と法の支配、海事と航行の自由、多国間主義の擁護者と見なしています。こういったことは、すべてスペインにとって非常に重要です。それはつまり、インド太平洋と、極東アジアの平和が安定し、さらない繁栄することを望んでいるということと、さらに、日本がこうした考えにおいて、擁護できる主要な国であるということです。

貿易と経済について

The cathedral bell tower in Seville.
スペイン産オレンジ。セビリアの街にはオレンジの木が約48,000本も. 写真: Gim42/Getty Images/iStockphoto

日本とスペインの貿易関係でさらに進展してほしい分野についてお話しいただけますか?

では、最初はすでに大きな進歩を遂げているものからお話しいたしましょうか。その1つは医薬品です。また、化学・材料分野での貿易活動も大幅に増加しています。その分野には自動車部品と自動車用品が含まれます。

スペインは、欧州連合で最大の輸出国の1つであり、工業製品と技術の最大の輸出国の1つです。スペインは重要な自動車および自動車部品産業を代表する国でもあります。

一般的な認識とは逆に、スペインは工業製品の大規模な輸出国です。また、スペインは特に日本への農産物や海産物の重要な輸出国でもあります。一例としては、スペインはヨーロッパ最大の豚肉製品の日本への輸出国であり、それはスペインの有名なハモンだけに限定されているものではありません。

大使として私が望んでおりましたのは、スペインが誇るハイレベルないくつかの農産物に日本市場を開放することです。オレンジのような柑橘類は、日本の非常に厳しい植物検疫規制があるために日本に輸出することができません。

スペインのオレンジとレモンは、世界で最も優れた農作物であることでよく知られています。そのため、こうした優れた農産物は、世界中で最も厳しい植物検疫規制のある市場にも輸出されています。ですが、それでも日本に輸出することはできておりません。

多くの場合、スペインはこうした農産物の日本の市場開放のために再交渉するよう努めてきましたが、徒労に終わっています。現状では、スペインは日本の相手方と緊密に協力し、日本政府において現在も施行されている厳しい規制の見直しを要請しています。

そうは言っても、スペインは他の分野でも進歩を遂げています。実際、私が25年前に日本に駐在していた時から比べたら、状況は著しく改善されました。一つには、欧州連合との戦略的経済貿易協定が結ばれたことがあり、これは計り知れないほどの助けになっています。

いくつかの例を挙げれば、スペインには大変高品質でおいしいワインがありますが、現在は関税なしで日本に輸入されています。これは非常に前向きな展開です。また、スペインのチーズはここ日本の一部のスーパーマーケットで見かけることができるようになってきました。これらの商品は日本の消費者からますます高く評価されています。

全体を見てみれば、スペインは多くの分野で進歩を遂げてきました。しかし、私たちの前にはまだ多くの交渉事があります。スペイン産の柑橘類への厳格かつ重要な規制の見直しは、スペインにとって非常に重要なカテゴリーです。

文化とスポーツ

Q:貿易や外交以外にも、スペインと日本にはスポーツや文化の交流が大変多くなされています。教育、文化交流、日常のスポーツなどの分野で、この後のさらなる二国間の協働計画はありますか?

私が駐日スペイン大使に任命される直前の2017年、両国は日本スペイン外交関係樹立150周年を迎えました。その記念に素晴らしい写真展を開催し、それらの作品、写真でこの大使公邸と大使館を飾りました。それはスペイン大使館が日本スペイン外交関係樹立150周年を祝うために開催したイベントの中でも最も成功したイベントの1つでした。

大使公邸に飾られた絵画

スペインは、ゴルフ、テニス、F1、オートバイ、そしてもちろんサッカーなど、さまざまなスポーツで一流の選手を生み出してきました。スポーツの分野での日本との交流と友情はとても強いものがあります。日本のスペイン商工会議所は、現在ヴィッセル神戸でプレーしているアンドレス・イニエスタに、スペイン商工会議所の「Spain Japan Business Contribution Awards 2021」を授与しています。私はこの賞をイニエスタ自身に手渡すことができました。イエニスタもスペイン大使館を積極的に支援してくれました。本当にありがたいことです。イエニスタへの感謝がつきません。イニエスタは日本が大好きで、神戸に家族と共に暮らしていますが、とても満足しています。

ただし、早急な改善が必要な領域が一件あります。私達の現在の主な目的は、その領域(神戸でしょうか?)の変更を再開することです。 待機している学生、日本留学の夢を叶えられなかった学生、特に外国人学生にとっては非常に大変なことでした。 来日、留学のために、奨学金をもらって日本の大学に入学する予定のスペイン人学生は、2年近く日本に入国することができていません。

こうした待機している学生たちは毎日のようにスペイン大使館に手紙を書いており、私たちは日本政府にそうした学生たちのために開放するよう説得しようとしています。 確かに、このパンデミックの状況の深刻さを理解しており、パンデミックが広がらないように特別な注意を払う必要があります。 ただし、それを回避する方法はいくつかあります。 日本がこうした待機している学生たちに、近々に入国を許可してくれることを願っています。

同じことが芸術的、文化的イベントにも当てはまります。一般的に、境界線とする部分において、日本も徐々に開かれてきています。幸いなことに、非常に厳しい規制にもかかわらず、いくつかの展示会を開催することができました。ですが、もっと多くの展示会を開催したいと思っています。

今は非常に重要な展覧会が1つあります。ですが、入国に制限があるために、現在、スペイン人アーティストの来日を要するような企画は非常に困難です。この恐ろしいパンデミックが緩和されることを待っているいくつかのプロジェクトもあります。

食品、飲み物について

Q:スペイン料理は世界中で有名であり、特に日本人はスペイン料理が大好きです。このインタビューの読者への特別なアドバイスはおありでしょうか

スペイン料理は日本料理と多くの類似点を共有していますね。日本全国に1500以上のスペイン料理店があります。 25年前に初めて日本に駐在していた頃から比べると、とても大きな変化の1つです。当時、スペイン料理店はそれほど多くありませんでした。スペインの現代料理は日本でますます人気があります。とりわけスペインにまで赴き、スペインで非常に優れた、ミシュランの星付きレストランを訪れる日本人も多くいます。

こうした有名なレストランのいくつかは、この2年の間に支店を開設しています。たとえばスペイン人シェフを日本に連れてきて、あたかもスペインで日本人のスペイン料理を愛する人々を迎えることができればよいのですが、こちらが望んでいたようなプロモーションはなかなかできませんでした。この状況が改善し、両国間の物資と人の流れが再開することを待つことになりますので、その時期をとても楽しみにしています。

お時間をいただき、ありがとうございました。

ホルヘ・トレド・アルビニャーナ氏 大使公邸にて

For more information visit: Spanish Embassy in Japan

Interview by David Schneider
Coordination by Hiroko M. Ohiwa

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