アンゴラ大使インタビュー
身近になりつつあるアフリカの大国、アンゴラ
豊かな資源、民主主義的思考と女性の活躍を応援
TICAD8も今年開催され、日本からのアフリカへの注目度はますます上がっている。この機会にアンゴラという国について、駐日アンゴラ特命全権大使、ルイ・オランド・シャビエル閣下にじっくりとお話しをお聴きした。
大使執務室でお目にかかった大使は、洗練された身のこなし、ヨーロッパ系の雰囲気も感じる素敵な紳士だ。大使の母国アンゴラは、アフリカ大陸西南部に位置し、その豊富な地下資源と急速な経済成長によってフロンティアマーケットとしての成長を続けている。日本との関係も大変良好だ。
アフリカの最先端の思考を知る上でも、是非とも皆さんに読んでいただきたい面白いインタビューになった。
質問:大使のキャリアについてお聞きしてもよろしいでしょうか。
外務省には1976年に入省いたしました。それから、いままでに国連、アフリカ連合などの国際的な会議に参加してきています。
外交官としては、第一書記官としてフランスに9か月間、参事官としてイタリアに6年間、公使参事官としてポルトガルに9年間の駐在経験があります。駐在の際は、在外公館勤務をいたしてまいりました。大使としてのミッションは日本が初めてです。2018年の12月5日に、天皇陛下に信任状を奉呈いたしました。
駐日大使になる前、外務省本省において多国間関係局長代理を務めており、色々な国のデリゲーションとコンタクトがありました。その中で、日本ともコンタクトがありました。日本への駐在の話があった時にはすぐに喜んで承諾いたしました。自分の新しいステージに踏み入れるという意味でも重要な経験であると思いました。
質問:アンゴラは、日本では今まではあまり知られていない国でしたが、大使のご着任後の努力が実り、両国間はとても近くなったと言えます。具体的な政治的、貿易などについてもお話しいただけますか。
まず、現在の日本とアンゴラの関係は素晴らしい関係だと言えることができます。今までもよいレベルでありましたが、私が日本に駐在することによって、さらによくなって行くようにといたしたいと願っています。私が駐在する前には、「今まで以上によりよい関係を作ってください」という政府からのミッションを与えられたという経緯もあるからです。
しかし、関係を作るというのは、そんなに簡単なことでないことは理解しています。日本にはアフリカに対する方針というのがあり、さらに独自の考え方があります。ですので、日本のやり方を理解した上で、こちら側からもスムーズに動くべきでしょう。日本がアフリカに対しても色々と提案をして下さること、関係性を持つことを、いつも深く考慮していくべきでしょう。そうした考えを持ちつつ、日本側からもアフリカに対してはさらに、共に深く掘り下げていけるようにと考えています。
また、日本にとって、アフリカは遠い、もしくはイメージ的に遠いと思われています。しかし、ネット社会が発達した今、この時代になりましたら、そんなに遠いという大陸というのはもうないのではないでしょうか。
ただ、日本からアフリカに対しての考え方には、政治的に不安定であるという心配は今もまだあるようです。しかし、現在においては、いくつかの例外もありますが、基本的にアフリカの国々は政治的に安定しています。多くの国々は平和になっています。つまり平和な政治が行われていると理解していただきたいと思います。
特にアンゴラが地理的に置かれている南部アフリカですが、南部アフリカ開発共同体(SADC)となっております。この地域は、本当に平和な政治が保たれています。そのSADC地域は、アフリカの中でも大変経済的にもポテンシャルがある地域でもあり、更には政治的にも安定しているという理想的な地域とも言えます。
ぜひとも、日本の方にはアフリカ、特に南部アフリカ、アンゴラに行っていただき、投資を考えていただきたいと願っています。アンゴラがあるこの地域には、本当に豊かな資源に恵まれています。駐日アンゴラ大使としても、大使館としても、アンゴラができる限り日本で知られるようと努力をし続けています。日本側からも、我々の努力をよい形で受け入れていただいていると思います。
質問:2020年初頭から全世界で新型コロナウィルス感染によるパンデミックが起きていますが、アンゴラはどのような状況にあったのでしょうか。
アンゴラでももちろん新型コロナウィルスに感染した人たちは多く、亡くなった方もいます。ですが、ヨーロッパに比べたら、それほど悲劇というほどの被害には至りませんでした。それには、アンゴラ政府が早めに行動を起こし、移動クリニックが出動し、出来るだけ早くワクチンを国民に接種するという政策が功を奏したと言えます。
質問:日本とアンゴラの関係について、具体的な政策はおありでしょうか。
最初に、アンゴラから、2018年の年末に、大変大切なデリゲーションが日本に参りました。そのデリゲーションの中には大臣が3名含まれておりました。
そのデリゲーションが来た時に、南にあるナミベ港の包括開発請負契約を締結されました。これはアンゴラ政府とJBIC(国際協力銀行)等の間での一般協定で、投資総額は約700億円に上ります。
また、JICA(独立行政法人 国際協力機構)の事務所がアンゴラにできました。JICAが力を入れていることもあり、JICA関連の契約が数多くなされています。
一例では、つい最近、とても重要な債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)に係る契約の署名がなされました。具体的にはアンゴラへの融資に関わる案件です。新型コロナウィルス感染によって債務の返済が難しくなっている国々に向けて、債務の返済の延長がなされることになりました。これによってアンゴラの債務の返済は延長されることになりました。
この案件は、新型コロナウィルス感染拡大によって被害を受けた国々を救済しようという目的を持って、実現に至りました。G20の中で、債務援助のイニシアティブの決定があり、実現に至りました。
また、さらにもう一つ重要な契約案件が進んでいます。それは投資協定についてです。オンラインでの作業によって、勧められています。この協定が結ばれ、条件が整えば、日本企業からのアンゴラへの投資がしやすくなります。
質問:アンゴラは資源に恵まれたものですが、日本への輸出で代表的なものは何でしょうか。
木材が主流とも言えます。石油も重要ですが、まだ量が少ないので、できれば今後は輸出量を増やしていきたいと思っています。他には天然ガスが挙げられます。
しかし、現状では、日本からアンゴラへの輸出のほうが完全に勝っています。主な輸入品は、機械と車が挙げられます。トヨタがとても多いですね。日産、三菱、スバルといった他の日本の自動車メーカーの車も輸出されていますが、やはりトヨタの車がトップになっています。
質問:名古屋市に名誉領事館を開かれましたが、それは何か関係がありますか。
おっしゃる通り、2021年3月11日に、現在の豊田通商の社長である貸谷伊知郎様が名誉領事に就任されています。この件は日本政府を含む日本側の関係者、貸谷様ご本人に承認されました。よって、アンゴラは名誉領事館を開設することができました。
貸谷様は、国内外で活躍している企業人です。こうした関係によって、貸谷様をはじめとする方々の支援を得ることにより、日本の企業がさらにアンゴラに進出していくことにご助力いただけるのではないかと思っています。
質問:名誉領事の任命に続いて、姉妹都市はいかがでしょうか。
姉妹都市に関しては、つい最近、話しを始めたところです。豊田通商がある名古屋市と、ナミベ州があるモサベデス市という二つの都市の間で、この計画が実現出来たらいいと考えています。
大きな港であるナミベ港もナミベ州にあります。この港からは車の輸入もなされているという関係もあります。しかし、それ以上に市民同士の交流に期待しています。こうした姉妹都市契約がなされれば、今後の二国間の協力と交流でより深い相互協力できるのではないかと思っています。
質問:アンゴラはまだ若い国ですが、女性の活躍についてはどのような政策が取られていますか。
国連でも女性の力を増やそうとしています。アンゴラでもそうした考えに反応するかのように、女性の力を強めていくことにポイントを定めて努力しています。
女性の力を強めるのは、紙の上に書いてあることだけではありません。単純に「強めましょう」と言うだけではなく、女性自身が本当に自らが重用されていると感じるようにしていかなければなりません。
アンゴラの社会では、すでに国会議員、政治家、大使を務める女性は存在しています。しかし、まだその数は少ないので、今後はその数をより増やしていかないといけないと考えています。そのため、まず女性に対して教育と研修などの機会を増やしていくように進めています。すでに開始されたそうした努力に加え、今後はもっと増やしていくことが必要だとも考えており、新たな策を講じてもいます。最終的には女性の活躍の場が増え、あらゆる意味で、女性が活躍する場と男性が活躍する場が同じ程度の数になることが目標です。
私自身は女性と男性は同じであり、能力があるという人は男女の差に関わらず、よいポジションに登用されるべきだと思っています。しかし、女性のパワーを強めていこうということについては、まだまだやることがあると思います。
一例では、ブラジルでは政府が国会議員の中に何%は女性がいなければならないといった政策をとっています。しかしアンゴラではまだそういった対応には至っていません。むしろ、女性が占める割合を問題にするのではなく、女性は力があるからそこに行きたい、その仕事、ミッションに就きたいということが重要だと考えています。女性がいることによってそこにはメリットが生じるということがあり、それによってそのポジションに女性を参加させようということが重要です。男女の割合が最重要なわけではありません。
働いている女性なら身をもって理解しているかと思いますが、社会にはまだまだ保守的な男性がいることも確かです。そういった男性は、女性には能力があるということに、まだ自分の中で納得していないということもあります。
目標としては、北欧の社会の在り方でしょうか。北欧では、女性の登用については、そうすべきであるという社会像ができています。社会において、とてもうまくいっているので、そうしていくべきだと思っています。
質問;ファティマ夫人は日本にいらしてからも大変なご活躍をなさっていらっしゃいます。夫人は、マーケティングなどでもキャリアを積んだ方とお聞きしておりますが、今までもご活躍なさっていらしたのでしょうか。
日本での妻の活躍については、私も協力を惜しみません。私の妻は大使夫人である前にキャリアを積んだマーケティングのダイレクター、プロであり、企業でも責任ある立場、部署におりました。その当時は男性の部下も持っていました。
私の妻は外資系企業で国際関係の仕事をしていました。彼女がそうした外資系の企業で活躍していた頃は、女性がフロントに立って交渉することは珍しかった時代です。その時代には女性の活躍はなかったとさえ言えます。ですが、そのような時代にあっても、彼女自身が努力を重ねていったことによって、女性であっても交渉事に携わるということができたということでしょう。
特に日本は女性が前に出るということがまだまだ難しいことがありますね。
今日は大変興味深いお話しをありがとうございました。これからのアンゴラの発展に期待いたします。またお目にかかれれば幸いです。
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