南條俊輔フランソワ「夢のアルゴリズム」

時代を反映する表現 もう一つの世界への入り口を求めて
南條俊輔フランソワ 「夢のアルゴリズム」
2022年6月4日 [土] – 25日 [土]

現在、小山登美夫ギャラリー天王洲で開催中の南條俊輔フランソワの個展。ヨーロッパとアジアを行き来しながら育んだこのアーティストの感性を垣間見ることができる。彼は、だれもが「もう一つの世界への入り口」を求めること気づいている。それは確かに人類の夢でもある。その見果てぬ夢に対する、若いアーティストの理解と多彩な表現がこの個展には存在していた。

Fumio Nanjo and artist Shunsuke Francois Nanjo (right)

「サンテグジュペリの逃亡」

この作品は、1944年7月31日に行方が分からなくなった星の王子様の作者、サンテグジュペリの伝説に基づく。サンテグジュペリの行方は様々な都市伝説となり、その一つには憧れの地を見つけたという説がある。南條はその説にインスピレーションを受け、憧れの地にむかって逃亡したサンテグジュペリの飛行機を描いた。

「騎士団長を探す」

南條俊輔フランソワ 「夢のアルゴリズム」

日本で生まれ、フランスなどでも教育を受け、現在はベルギーに在住。8月からはベトナムに活動の本拠地を移すという南條俊輔フランソワ。彼は村上春樹の作品にもインスピレーションを受けている。この作品の中で、主人公は森の中で奇妙な穴を見つけるに変更。それは異次元に繋がる穴であった。その「穴」を南條は現実と夢の世界の間を行き来するための装置であり、彼自身の中ではアート、文学と同じ機能を果たしているという。人は誰もが現実と空想の間を行き来するという夢を持っている。その装置がこの作品には潜んでいる。

「飛行石」

南條俊輔フランソワ 「夢のアルゴリズム」
南條俊輔フランソワ 「夢のアルゴリズム」

天空の城ラピュタには飛行石という空を飛ばすことができる物体が出てくる。石、鉱物には謎も多いし、批判の対象となることもある。南條俊輔フランソワはあえて石を人工的に、絵画に現れるようなカラフルな物体に形成。季節によって変色する「時間を刻む鉱物」としての意味を持たせている。

「The Infinite Landscape」

カメラマンとしても活動している南條俊輔フランソワ。架空のランドスケープが時間と共に変化するというデジタルアートも制作。一見写実に見えるが、リアルタイムで生成されるランドスケープは変化し続ける。これは人がデジタル媒体を現実に近づけようとする苦悩を表しているという。彼が作り出す架空の世界感を味わえる。

本展を通して、南條俊輔フランソワが訴えたかったこととは何だろうか。彼はこの展覧会の意向について以下のようにコメントしている。「村上春樹、デヴィッド·リンチ、荘子の夢、コジマスタジオのゲーム作品などに描かれた世界感の中には、必ずある種の異変、空白、異次元への入り口が裂け目のように生じてきます。そのような隙間は、フーコーのいうヘテロトピア、ハキム·ベイの指摘するTAZ(Temporary Autonomous Zone)と重なるような意味を持っているのではないでしょうか。それはメタバースの様に、もう一つの世界への入り口でもあるのです。その隙間で生じる物語性に興味を持ち、影響しながら制作した作品です。」

「夢のアルゴリズム」と題されたこの個展のテーマに共通するものは「人」だという。アートのメッセージは世代、国境、文化を超えて変わるものではあるものの、その到着地点は「人」でしかないと、作家である南條俊輔フランソワは語っている。「人」を中心に渦を巻き、流れを作り、歴史を築いている中、南條俊輔フランソワはアートというメディアを用いて、一瞬でも「人」の足を止めさせ、「夢」をこの個展で表現している。

今年8月からはベトナムに活動の中心を移すという。アジアというヨーロッパとはまた違った宗教観、人生観を持つ世界に身を置くことで、彼はさらに「もう一つの入り口」を探し出し、表現していくことだろう。

南條俊輔フランソワ 「夢のアルゴリズム」

小山登美夫ギャラリー天王洲で開催
2022年6月4日 [土] – 25日 [土] 
場所:東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex Ⅰ 4F
OPEN:11:00-18:00 日月祝 休

*6月4日[土]は14時より作家在廊予定。

南條俊輔フランソワホームページ
http://www.shunsukefrancois-nanjo.com

【小山冨美夫ギャラリー 天王洲
http://tomiokoyamagallery.com/

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