特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」

特別展「日本美術をひも解く皇室、美の玉手箱」開催中

宮内庁三の丸尚蔵館には素晴らしい美術作品が収蔵されている。そうした珠玉の作品に、東京藝術大学の収蔵品を加えて構成されたのがこの美術展だ。会場となった東京藝術大学大学美術館は、岡倉天心とフェノロサが中心となって開校した東京美術学校を前身とし、以来、日本の芸術教育として重要な役割を担っている。この展覧会はそうした日本美術のトップとも言える二つの組織が協働で作り上げている。

展示室に入ると、《菊蒔絵螺鈿棚》の美しさにはっと息をのむ。この作品は明治天皇のご許可のもと、東京美術学校と宮内省によって制作された。この精緻かつ美しい螺鈿細工には、東京美術学校の一期生であり、後に漆の第一人者となり、日本人なら誰もが目にしたことがある麒麟麦酒の麒麟のマークをデザインした六角紫水らが関わり、当時の最高の技術と美意識をもって制作されている。

東京藝術大学大学美術館で開催中の特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」
写真の作品は、浜松図屏風 海北友松 桃山時代 慶長7年(1602)頃 展示期間:8月28日(日)まで

最初の展示作品から、この展覧会には匠という言葉が関わっていることが伝わってくる。日本を代表する各分野の匠が、その技を競い合っている。日本古来の雅楽を舞う楽師を伝統的な彫金と鍛金の技術で制作した太平楽置物は、その工芸技術の高さに圧倒される。高村光雲作のつがいの《矮鶏置物》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、8月28日(日)までの展示)の羽の描写は素晴らしい。また、真っ白な麒麟を表現した十二代酒井田柿右衛門の《白磁麒麟置物》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、通期展示)は、本来の優しい性格を表した姿ではなく、左前脚を上げ、振り返って雄たけびを上げるような雄々しい姿で表されている。

この展覧会には生き物をテーマにした章もある。国宝《唐獅子図屏風》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、8月28日(日)までの展示)は、右隻を狩野永徳が描き、左隻をひ孫にあたる狩野常信が描いている。永徳はつがいの獅子を悠然とした姿に描き、ひ孫の常信は、躍動感あふれる獅子を描いている。

月次絵と呼ばれる一連のシリーズには、皇室ならではの四季の移ろいが感じられる。酒井抱一が描いた《花鳥十二ヶ月図》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、8月28日(日)までの展示)は、その月ごとに花を咲かせる美しい花々と野菜、鳥の姿を組み合わせている。七月の図として描かれた、紺色の朝顔の花の間からのぞく、トウモロコシの姿、のびやかな筆遣いで描いた葉は特に印象的だ。

この展覧会に出展された作品は一度に鑑賞する機会が少ないものばかりだ。この展覧会は、日本人だけでなく、是非とも外国人にも見て頂きたい。日本の美が詰まった宝箱を開けた気分になれる。

特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」展覧会公式HP

会期:2022年8月6日(土)〜9月25日(日)

※会期中、作品の展示替え及び巻替えがあります

会場:東京藝術大学大学美術館(台東区・上野公園)

※詳細は展覧会公式HPをご覧ください

Similar Posts