東京国立博物館 デジタル法隆寺宝物館 最先端の技術で歴史を見る

日本が世界に誇る文化遺産といえば、まず一番に思い浮かぶのは奈良県にある法隆寺だ。その魅力を日本国内だけでなく、海外にも発信しようと内覧会が開催された。この内覧会では、日本に長く滞在し、日本の美術に造詣が深いジャーナリストのアリス・ゴーデンカーが解説を行った。

解説を行うジャーナリストのアリス・ゴーデンカー氏
解説を行うジャーナリストのアリス・ゴーデンカー氏

現存する世界最古の木造建造物である法隆寺は、7世紀初頭に用明天皇の皇子であった聖徳太子により、建立された。創建された当時は斑鳩寺(いかるがでら)と称したが、法隆寺とも呼ばれる。

1878年に法隆寺に伝来した宝物300件余は皇室に献納され、その収蔵・展示を目的として、1964年に東京国立博物館に法隆寺宝物館が開館、1999年に建て替えを行い、現在に至っている。

法隆寺宝物館では、現在デジタル技術を駆使し、法隆寺ゆかりの名宝をデジタルコンテンツで鑑賞することができる。また、宝物を同じくデジタル技術によって複製し、作られた当時の姿のままに鑑賞することもできる。

現在公開されているのは国宝「聖徳太子絵伝」をテーマとしたコンテンツだ。「聖徳太子絵伝」は1069年絵師・秦致貞(はたのちてい)の手により制作された障子絵で、現存する最古の聖徳太子絵伝とされる。全部で10面からなる大作であり、その画面には聖徳太子の生涯に起きた50以上の逸話、実績、事象等が描かれている。原品の「聖徳太子絵伝」は描かれた当初からは非常に長い年月が経っており、画面のいたみがひどかった。しかし、現代のデジタルコンテンツ〈8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」〉によって高精細画像を大型8Kモニターに映し出し、描かれた細部までじっくり鑑賞することができる。

原寸大のグラフィックパネルでみる、国宝「聖徳太子絵伝」秦致貞 筆/平安時代・延久元年(1069)/綾本着色/ 10 面/東京国立博物館 
原寸大のグラフィックパネルでみる、国宝「聖徳太子絵伝」秦致貞 筆/平安時代・延久元年(1069)/綾本着色/ 10 面/東京国立博物館 
国宝「聖徳太子絵伝」の解説をするアリス・ゴーデンカー氏
国宝「聖徳太子絵伝」の解説をするアリス・ゴーデンカー氏

聖徳太子にまつわる逸話は現代にも伝わっており、日本人の多くが知る。その中でも特に知られているのは豊聡耳(とよとみみ、とよさとみみ)と呼ばれた伝説ではないか。ここでは11歳の聖徳太子が、36人の子供の話を聞き漏らさなかったという逸話が描かれた部分も明確に見ることができる。

鑑賞者はこの「聖徳太子絵伝」の見たい部分を大きく拡大してみることもできる。いくつもの伝説に彩られた天才「聖徳太子」の表情まで詳しく見つめることもできる。まるで聖徳太子の生きた時代を手に取るような体験だ。

法隆寺宝物館は、伎楽の面も多く所蔵している。伎楽は飛鳥時代に大陸からの帰化人が伝え、楽器の演奏とともに舞を行ったとされるが比較的早くにすたれてしまったという。法隆寺の伎楽面には飛鳥時代に作られた面が含まれているが、それらの面には大陸との交流を物語るように、ペルシャ人の面影を残すものもある。

東京国立博物館で開催中のデジタル法隆寺宝物館より
東京国立博物館で開催中のデジタル法隆寺宝物館より
法隆寺献納宝物 伎楽面 迦楼羅(飛鳥時代・7世紀)
法隆寺献納宝物 伎楽面 迦楼羅(飛鳥時代・7世紀)

年月を経てダメージを受けた面のうち2面は、現代の先端技術も用いつつ、厳密な考証を踏まえて復元模造が制作され、制作当時の色も復元されている。その復元には、海外の美術館博物館に残る資料から得られた情報も反映されている。2019年に伎楽面「呉女」と「迦楼羅」を復元したが、「迦楼羅」の冠、とさかの部分の復元はドイツに残る資料から行われたという。

また、伎楽装束「裳(も)」と「袍(ほう)」も復元模造されている。これは当時の優美なデザイン、鮮やかな色を現代に楽しむことができ、とても楽しい。

復元模造された伎楽装束〈裳(も)〉
復元模造された伎楽装束〈裳(も)〉

復元模造された伎楽面〈呉女〉
復元模造された伎楽面〈呉女〉

東京国立博物館は日本の文化、歴史を紐解き、垣間見るには最も重要な文化施設だ。訪れる際は是非とも多くの時間を費やし、デジタル法隆寺宝物館にも立ち寄り、現代の技術によって復元された飛鳥時代の日本を味わってほしい。

東京国立博物館公式HP内「デジタル法隆寺宝物館」ページはこちらから

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