銀座メゾン・エルメス「輝板膜タペータム」落合多武展
エルメスはアート、ビジョン、スタイルの3つにおいて精通していることで知られいるが、2021年1月22日より期間限定でエルメス財団による、ニューヨークを拠点に活動する美術家 落合多武の個展を開催することになった。
彼の作品は、1990年の渡米直後より発表をはじめ、日本では国立国際美術館や東京都現代美術館コレクションのほか、ワタリウム美術館(2010)での個展や水戸美術館(2007)、原美術館(2009)でのグループ展や横浜トリエンナーレ2011への参加などを通して紹介されてきた。
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落合多武の制作活動は、ドローイング、ペインティング、彫刻、映像、パフォーマンス、詩や文章の執筆や印刷物など、多様な形態をとりながら実践されている。
展示スペースの壁すらも、アートの延長として使用することでも知られている。
タイトルに掲げられている「輝板膜タペータム(Tapetum Lucidum)」は、夜行性動物の眼球内にある輝板(タペタム)という構造物を参照している。これは、網膜の外側に存在し、暗闇の中のわずかな光を捉えて反射する機能を持ち、猫の目が暗闇で光る現象として理解されているものだ。人間の視覚にはないこの輝板は、日ごろ、特段意識をしていないものから光を集め、一瞬の反射光を放つ、軽快でウィットに富んだ落合多武の表現なのだ。それらは断片のようでありながら、断片から全体像を常に揺り動かしてゆくように作用し、ひとつのナラティブに収束することがない。
今年の個展「輝板膜タペータム」では、彼の25年間の芸術作品が展示されている。
ドローイング、彫刻、ビデオから写真に至るまで、各芸術作品が持つものの繋がりや、無限の旅を体現した作品が見られる。
「暗い場所で光を反射し続ける眼球は、見られるものに対して中間地点にいる」と落合は語る。
その眼球の中をこの展覧会とするならば、その世界は見るものと見られるものが自由に交差する永遠の中間地点を象徴しているのかもしれない。
「輝板膜タペータム」 落合多武展 Tapetum Lucidum by Tam Ochiai
会期: 2021年1月22日(金)~4月11日(日) 開館時間:11:00~19:00(最終入場18:30)
個展についての詳細は、銀座メゾンエルメス フォーラムのオフィシャルサイトから閲覧いただけます。: エルメス ジャパン