蔡國強の大規模個展「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」
「〈原初火球〉—それは私の思想とビジョンに基づく出発であり、今日まで私に付き添ってきた。」
2008年の北京オリンピック開会式での「大脚印ービッグフット」と言う着想に基づく花火プロジェクトでも知られる中国出身の世界的アーティスト、蔡國強。この度、国立新美術館とサンローランの共催により、大規模な蔡の個展が開催されている。
蔡はこの展覧会について「自らを省みる展覧会」と語る。大きな会場全体が蔡國強の意図するインスタレーションのような空間となっていることを鑑賞する人は必ず感じることだろう。この展覧会は、蔡國強が過ごしてきた主として3つのあゆみを辿っている。その三つのあゆみとは、中国で作家として歩みだした時期、芸術家として重要な形成期を過ごした日本、アメリカや世界を舞台に活躍する現在までだ。
展示も歩んできた旅路を辿るようであり、日本初公開のガラス、鏡に焼き付けた新作、その他、貴重な記録映像なども公開され、彼の芸術家としての姿を間近に見ることもできる。火薬がもたらす何かにフォーカスした作品、世界の注目を浴びた爆発イベント《スカイラダー》の記録画像など、蔡の今までも優れた作品を改めて鑑賞すると同時に、蔡が探求し続けているAIなどを使った作品も紹介されている。
本展の開幕に先立って、かつて蔡が長い時間を過ごした福島県いわき市では白天花火《満天の桜が咲く日》も開催された。展覧会の終盤の展示では、蔡が過ごしたいわき市での日々、人々との交流も観ることができる。改めて、蔡は日本で芸術家として大きく成長したことが分かる。
多彩な作品群に触れつつ、蔡國強が抱く壮大な世界観を是非とも感じてほしい。