駐日オマーン·スルタン国特の豊かな文化遺産と日本との強い絆駐日オマーン大使インタビュー
現在、駐日オマーン·スルタン国駐日大使を務めるモハメド・サイード・アル・ブサイディ特命全権大使閣下の管轄範囲は広く、日本のみならず、非居住大使としてオーストラリアとニュージーランドにも及ぶ。今回はオマーンの豊かな歴史と文化遺産、日本文化への思いに加え、オマーンが日本との関係を維持しながら推進する持続可能な社会を構築するための施策についてお聞きした。
日本における大使のミッションについてお話しいただけますか?
基本的には「友人をたくさん作ること」と申し上げるべきでしょうか。オマーンは歴史的に海洋国家として成り立っています。その為、西南アジアとアフリカを結ぶ戦略的な位置にあるため、海上貿易が盛んな国家と言えます。そうした地理的な条件から、アメリカ、アジア、ヨーロッパと、常に世界中に友人と言える人々、国家があります。実は、1840年に初めて米国に派遣された大使の一人がオマーン出身です。現在も米国にはその大使をモデルに描いた有名な絵があります。
日本との関係も非常にユニークと言えます。1972年に両国間の国交が樹立され、今年で50周年を迎えました。しかし、オマーンと日本は、400年以上前から強い関係が結ばれ、その関係はすでに根付いております。オマーンの平和と統一に対する政策は同じ目的を持つ日本の政策と非常によく似ているということも共通点として挙げられます。実際にオマーンは、中東で最も安定した国であり、平和で進歩的なとしても認められています。そうした状況にあるオマーンは、中東における「平和のオアシス」であり続けており、地域のさまざまな紛争の調停者としての役割も担ってきました。
また、オマーンは経済の多角化にも大いに力を注いでいます。今までの石油、ガス、炭化水素といった化石エネルギーによる経済だけでなく、非石油の経済も拡大させています。日本はオマーンにとって最大の貿易相手国の一つであり、日本からの自動車、トラック、機械、電子機器などの輸入は順調に伸びています。オマーンとしては、今後はより投資、ビジネス、貿易、経済交流の分野で日本とのパートナーシップを拡大したい意向です。
以前に日本語を勉強されたことがおありでしたか??
残念ながらそうした機会はありませんでした。ですが、もし、自分が日本で大使になると知っていたら、日本語を勉強していたでしょう。日本に来てからずっと日本語を勉強しようと思っていました。同僚に助けてもらいながら、なんとか単語をいくつか覚えましたが、まだ話せるまでにはなっておりません。
日本への農業や水産物の輸出についてお話いただけますか。各種の資料によると、オマーンではこれらの産業への重点的なシフトが行われているとのことですので、その点もお話しください。
オマーンは人口も増加、経済も発展し、人気のある観光地として知られてきています。このことからさらに質の高い食品への需要が高まっています。経済的にも、オマーンの水産業は未知とも言える可能性を秘めておりますので、より力を注いでいます。FDO(オマーン漁業開発)という会社も設立されており、この企業は水産分野のあらゆる取り組みの陣頭指揮をとっています。天然水産資源に加え、養殖にも力を入れており、特に貝類や甲殻類などの水産物を高品質かつ大量に生産できる養殖場を建設しています。オマーンはインド洋沿いに3,000キロメートル以上の海岸線を持ち、海洋の生物多様性に富んでいるということがあります。
農業も発展中の産業の一つですので、日本の友人たちとともに、その技術を学びつつ、進捗状況を共有することを楽しみにしています。オマーンは食料生産指数で世界第32位です。オマーンはほぼ全土が乾燥した国で、降水量も多くありません。そのため、必要なものを満たすためには資源を賢く利用しなければなりません。高度な農業技術の利用が進み、国内の作物生産を支援する政府の政策が充実していることも、同国の市場成長を後押しする要因の一つとなっています。現在、大きな課題となっているのは潅漑用水へのアクセスです。潅漑用水の使用量を削減させ、作物の潅漑用水を再利用するためにも、その技術が重要な役割を担っています。
先週、オマーン政府は2050年までに炭素排出量を正味ゼロにすることを公約に掲げました。また、グリーン水素の会社など、さまざまな企業へのコミットメントも発表しています。オマーンは2040年までに炭化水素中心の経済を構築する計画で、2040年までにグリーン水素とブルー水素の年間生産量を30 GWにする見込みです。オマーンはおそらく世界でも有数のグリーン水素の生産国となり、日本などの国々に供給することになるでしょう。現在、5万平方キロメートル以上がグリーン水素の生産に割り当てられています。
大使の故郷でのお気に入りの場所はどちらでしょうか。また、日本人観光客にお勧めの場所も教えていただけますか?
私たちはいつもオマーンは観光の穴場の一つだと言っています。オマーンは美しい国です。オマーンの伝統、おいしい食事、豊かな文化、首都マスカットに代表される壮大ともいえる都市など、たくさんの見どころがあります。ユニークで魅力的な国ともうしあげるべきでしょうか。オマーン観光の日程は1カ月では足りません。野生動物をはじめとする自然にも、多くの魅力を見出されることでしょう。
海岸線は故郷を思い出すとおっしゃいましたが、東京や日本でお気に入りの場所はありますか?
日本の人を見ていると、みんなよく似ているように思えます。日本人は謙虚で、親切で、フレンドリーです。日本文化に親しんで、人々と親しくなればなるほど、その寛容さゆえに明るい面も見えてきます。場所という点では、山梨側からの富士山がおすすめです。富士山はオマーンにある標高3000メートルほどのジェベル・アフダル山よりわずかに高い山です。冬にはジェベル・アフダル山の頂に雪が積もることがありますが、富士山のように雪を頂いた姿を見ることはできません。ジェベル・アフダル山は富士山のような火山ではなく、台地という感じです。
オマーンの有名な食べ物はについてお話しいただけますか。お好きなレシピはおありでしょうか?
最近、オマーンの小さな会社に、製品のサンプルの提供を依頼しました。オマーンでは、生産・製造の基準が非常に高いので、日本のビジネに関わる人々にオマーンの素晴らしい製品を紹介したいと思っています。私が期待しているのは、今後、日本の輸入業者がオマーンのメーカーや生産者と契約を結び、オマーン製品の日本への輸入を開始することです。こうしたビジネスでの発展により、両国の距離がさらに縮まることもまた期待しています。11月18日のナショナル・デーには、これらの製品サンプルを展示し、さらにその後、数カ月間は展示を継続する予定です。
オマーン料理には素晴らしい料理がたくさんあります。その中には何百年も前から伝わる料理もあります。私のお気に入りの料理は「シュワ」と呼ばれるものです。この料理は子羊やヤギの肉をじっくりと漬け込んでから煮込んだものです。この料理は通常、お祭りや特別な日に作られます。まず肉を発酵させたナツメヤシの酢とスパイスで揉み、バナナやヤシの葉で包み、天然素材でできた特殊な袋に入れます。一方、地面に穴を掘りドラム缶や金属製の容器をその中に入れてオーブンを用意します。それから容器の中に火をつけ、肉の入った袋を中に入れます。容器に蓋をして密閉し、オーブンに蓋を被せます。それからよく漬け込んだ肉を24時間から48時間かけてじっくりと焼き上げていきます。
アル·ブサイディ大使、インタビューにお応えくださってありがとうございました。