第16回ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクール優勝記念 前田妃奈 ヴァイオリン・リサイタル

昨年、ポーランドで開催された第16回ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクールで、日本の音大生、前田妃奈がグランプリを獲得したことはまだ記憶に新しい。7月27日には、東京、紀尾井ホールで優勝記念リサイタルを開催した。期待の新人ということもあり、名ヴァイオリニストの徳永二男、音楽評論家などもコンサート会場に顔を揃えた。

前田妃奈がこのリサイタルのために選んだプログラムは以下の通り。

  • モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第21番 ホ短調 K.304
  • R.シュトラウス :ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18
  • J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 
  • 第2番 二短調 BWV.1004 より「シャコンヌ」
  • マスネ:タイスの瞑想曲
  • ヴィエニアフスキ:グノーの「ファウスト」の主題による 華麗なる幻想曲 op.20
名器・ストラディヴァリウス「ヨアヒム」とヴァイオリニストの前田妃奈さん
名器・ストラディヴァリウス「ヨアヒム」とヴァイオリニストの前田妃奈さん

前田妃奈は、活き活きとした熱い表現をもって、これらのプログラムを弾きこなしていた。高校生時代から豊かな表現力が注目されている若手ヴァイオリニストだが、この優勝を期に更に成長した姿を垣間見ることができた。

現在、前田妃奈が使っているのは、2022年8月31日より日本財団から貸与されている1715年製ヴァイオリン、ストラディヴァリウス「ヨアヒム」だ。これはハンガリーの名バイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムが愛用していることでも知られている名器だ。

まだ前田とコンビをくんで1年程のストラディヴァリだが、とても相性がいいように思えた。

第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールに出場した機会に知り合ったというピアニストのグレッグ・スクロビンスキも素晴らしい演奏を披露し、若手二人による息の合った演奏にほぼ満席の会場は沸いた。

ピアニストのグレッグ・スクロビンスキと共に大学生らしい笑顔を見せる前田妃奈さん
ピアニストのグレッグ・スクロビンスキと共に大学生らしい笑顔を見せる前田妃奈さん

前田妃奈は今、精力的に演奏活動を行い、世界各地でコンサートを開催している。

まさに期待の大型新人だが、その素顔は天真爛漫だ。パンフレットの冒頭に記載した彼女自身によるメッセージも若々しく、また、コンサートの最後の挨拶にも前田妃奈の性格の良さが現れていた。

今から次のコンサートが待ち遠しい新人ヴァイオリニストの誕生だった。

前田 妃奈

 大阪府生まれ。4歳よりヴァイオリンを始め、東京音楽大学付属高等学校を経て、東京音楽大学に特別特待奨学生として在学し、現在、小栗まち絵、原田幸一郎、神尾真由子の各氏に師事。2022年10月開催の第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール(ポーランド)優勝同時に4つの特別賞を受賞。第67回全日本学生音楽コンクール全国大会小学校の部第1位。第16回クロスターシェーンタール国際ヴァイオリンコンクール(ドイツ)14歳以下の部第1位、併せてヴィルティオーゾ賞、Forderpreisを受賞。2019年第88回日本音楽コンクール第2位及び岩谷賞(聴衆賞)。2020年第18回東京音楽コンクール弦楽部門第1位及び聴衆賞。その他、霧島国際音楽祭賞、松方ホール音楽奨励賞など、国内外のコンクール、オーディション、マスタークラスで多数の賞を受賞。11歳より、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団など関西の主要オーケストラ、東京交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団他とソリストとして共演。公益財団法人江副記念リクルート財団第48回奨学生。

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