静嘉堂文庫美術館|美を味わう 懐石のうつわと茶の湯展 6月14日まで開催

静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展にて

静嘉堂文庫美術館には三菱第二代社長の岩﨑之助と第四代社長の岩﨑小彌太がおよそ60年間に蒐集した東洋美術、約6500点を所蔵している。今回の「美を味わう」展はそのコレクションの中から、茶事における懐石で用いられるえりすぐりの作品を選んで展示している。

静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展にて
静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展

この展覧会の構成について、静嘉堂文庫美術館館長の安村敏信氏は、「料理を盛り付けて展示することを考えたけれど、腐ってしまうので諦めざるをえなかった」と語る。今回、展示された作品群は、殆どが岩﨑家の鳥居坂本邸、熱海の別邸において、茶事を行うために使われていたことが想像される。しかし、この館長の意向はある特別な形で実現され、この展覧会はとても輝きを増すことになった。

静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展にて

今回の展覧会は雑誌月刊「なごみ」とコラボしており、月刊「なごみ」で撮影、掲載された「出品される名品の数々に季節の料理を盛り」つけた画像が色々なところに配置されていた。これは東京と京都を代表する懐石料理店「辻留」と「一文字」の料理長の協力による。巻頭特集の撮影場所となった東京・大橋茶寮の厨房で、辻留の料理長が作った料理を丁寧に、器との調和が表現されるように盛り付ける様子も動画によって見ることができる。料理をもってこそ器の真骨頂を体感できる展示だ。

静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展にて

展示された器の数々は、西洋のテーブルウェアのようにすべてが同じ文様で統一されているということはない。それぞれの器は、陶工の個性、窯の違いによる違った作風、風合いを持つ。産地も様々であり、日本、中国の明朝、清朝、朝鮮、ベトナムなどと幅広く、年代も様々だ。こうした多様性に富んだ食器を組み合わせ、少量の料理を盛り付けて提供し、最後の茶席にまで続いていく懐石料理は、まさに「美を味わう」という世界観を身をもって感じることができる最高の贅沢だ。

静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展にて

懐石料理をいただいた後は、客は抹茶をいただく。ここでは展覧会最後の一室で茶席に関する展示が行われ、鑑賞者はあたかも懐石料理を食したあとのような気分で奥深い茶の湯の世界を鑑賞することができる。ここでは、完成品としては世界にたった3つしか存在せず、静嘉堂文庫美術館所蔵品が一番美しいと言われる曜変天目を間近に見ることもできる。1934年に岩﨑家の所蔵となったこの曜変天目は、器の内側に浮かび上がる斑文の周りに輝くコバルト色の光があらわれ、あたかも大宇宙がこの中に閉じ込められているような様子を見せる。

また、この展覧会の見どころの一つは、《唐物茄子茶入 付藻茄子》ではないか。付藻は「九十九」とも「作物(九十九)」とも書かれる。この茶入れは豊臣秀吉、徳川家康などの天下をとった人々の手中にあったが、大坂夏の陣で大破してしまう。しかし、家康の命によって当時の塗師の藤重藤元・藤巖父子が破片を拾い上げ、精巧な漆繕いを施して現在の姿によみがえったという。

静嘉堂文庫美術館で開催中 「美を味わう 懐石のうつわと茶の湯」展にて
唐物茄子茶入 付藻茄子(つくもなす)

この展覧会では、付藻茄子の破損と漆繕いを現代のテクノロジーによって調査した画像なども展示され、当時の優れた漆繕いの技術と藤重父子の優れた修復の実際も見ることができる。

懐石の器から感じ取れることは、日本人は古くから多様性に富み、完璧主義であり、また瞬間の美を重んじる民族ではないか。茶事にかかわる事柄すべてが瞬間で完結することだからだ。料理は口に運べば終わってしまい、器だけが残る。器は料理を失うことでまた違った魅力に変化する。そうした瞬間の美が懐石にはあるように思った展覧会であった。

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