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メキシコが生んだ世界で活躍するピアニスト、アレハンドロ・ベラ、メキシコ大使館で演奏

ラテン、カリブ諸国は豊かな文化を持っていることは有名だが、クラシック音楽の分野にも優秀な演奏家を数多く輩出している。 アルゼンチン出身のマルタ・アルゲリッチ、ダニエル・バレンボイム、チリには伝説的なピアニスト、クラウディオ・アラウがおり、最近では、ベネズエラア出身のグスターボ・ドゥダメルが世界の楽壇をリードしている。ブラジルには惜しまれながら昨年逝去したネルソン・フレイレがおり、メキシコからはフランチェスコ・アライサを始め、ラモン・バルガスなど多くのオペラ歌手が世界のオペラハウスに出演し、指揮者のエドアルド・マ―タは、若くして飛行機事故により逝去したが、何度も日本でオペラ歌曲を指揮し、日本のオペラファンには忘れられない存在だ。メキシコはマヤ文明とその遺跡群で知られるだけでなく、クラシック音楽大国でもある。 そのメキシコからアレハンドロ・ベラが来日し、駐日メキシコ大使館で待望のオール・メキシカン・プログラムを演奏した。 このプログラムにはメキシコを代表する作曲家、マニュエル・ポンセが作曲した「エストレリータ 小さな星」も含まれていた。これは伝説的なバイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツが編曲し、演奏したことでも知られる名曲だ。ポンセはパリ音楽院在学中に、アンドレアス・セゴビアと親しくなり、後にこのスペインが生んだ天才ギタリストの為に作曲をしている。 ベラはこの母国が生んだ大作曲家の曲を、メキシコ人としての感性を込めて、他のピアニストには出せない情感溢れる表現をもって演奏した。その表現と演奏に、全ての聴衆は酔いしれ、今まで知られていなかったメキシコ音楽の真髄を知ったことだろう。 このコンサートは、優れた演奏家を日本に紹介し続けている「NPOちきゅう市民クラブ(会長:千代鳥 モーミンウッディン(Mominuddin Chowdhury)、副会長/事務局長:川島佳子)」によって企画された。開催については、自国の優れたカルチャーを紹介し続けている駐日メキシコ共和国メルバ・プリーア大使の支援と尽力があった。 オール・メキシカンプログラム アレハンドロ・ベラ (オフィシャルHP) アレハンドロ・ベラ(ピアニスト)プロフィール メキシコ、コアウイラ州ピエドラス・ネグラ出身。世界を舞台に活躍するメキシコを代表するピアニスト。彼の演奏は、神秘的で壮麗な世界を創り出し、聴衆を研ぎ澄まされた美の世界へと誘う。情感あふれる深い表現力は、まるで映像を見ているような生き生きとした情景を聴衆に想起させる。 幼少よりピアノを母、オルテンシア・ベラ・マンテに師事。後にピアニストで作曲家のロバート・アバロンにテキサス州で師事。11歳から15歳の4年間、毎週日曜日母の運転で、片道200キロ、パスポートをもって、メキシコからアメリカ、テキサスにピアノを習いに通った。10代の頃、著名なピアニスト、指揮者であるマエストロ、クリストフ・エッシェンバッハに見いだされ、シカゴ シンフォニー、ヒューストン シンフォニー、オランダのロイヤル・コンセルト・ヘボウ、そして、イスラエルやカナダ、ドミニク共和国のオーケストラで、共演している。マエストロのアドバイスにより、ニューヨークのジュリアード音楽院に入学。ヨヘベ・カプリンスキーに師事し、学士号、修士号を取得。ジュリアード音楽院でのソリストのためのコンクールで優勝。ニューヨークのスーザン・ローズ音楽基金賞を2年連続受賞。演奏家としての活動の他、多くの時間を音楽教育にも注いでいる。ヒューストンAWTY国際スクールで教え、ヒューストンでは、「アーチスト・イン・レジデンス」として数年間滞在した。また、メキシコのサカテカス大学、台湾、ヨーロッパの大学でもマスタークラスを開催。近年では、プラハ、ブダペスト、東京、台湾、トロント、モントリオール、ローマ、ウイーン、キエフ、ベルリン、パリ、ベルギーでソロリサイタルを開催。メキシコ・シティ国立芸術センター他、数々のメキシコの文化施設での演奏会、フェスティバルに出演し、輝かしいキャリアを積み、その卓越した演奏で喝采を浴びている。2012年秋、2013年春、2015年から2019年まで毎年、日本ツアーを行い、名古屋、岡山、群馬、広島、沖縄各地で演奏会。都内では、東京国立博物館、イタリア文化会館、メキシコ大使公邸等でも度々演奏している。NHKB1「エル・ムンド」に出演し、好評を博した。2014年4月、12回もグラミー賞を受賞したRafaSardina 氏のディレクションにより、チェコ共和国で、中東和平をテーマにした壮大なピアノ コンチェルトをチェコのオーケストラと録音。2019年メキシコで世界初演を果たす。コロナ禍を経て、3年ぶりの来日となる。 【関連記事】

井上道義作曲のミュージカルオペラ『A Way from Surrender〜降福からの道〜』世界初演

世界的な指揮者でもある井上道義が、太平洋戦争を挟んだ激動の時代を生きた両親の人生と自身のルーツを基に、10年の歳月を要して書き上げた自伝的オペラ。 井上道義と度々協演しているコロンえりかがここでも重要な役を演じている。 コロンえりかは、聖心女子大学・大学院で教育学を学んだ後、英国王立音楽院を優秀賞で卒業。同年ウィグモアホールデビュー。 モーツァルト・フェスティバル(ブリュッセル)、宗教音楽祭(フィレンツェ)、日英国交150年記念メサイア(ロンドン) でソリストを務めるなどオラトリオの分野に力を注ぐ。 代表曲は、父エリック・コロンが平和への願いを込めて作曲した「被爆のマリアに捧げる讃歌」。 東日本大震災以降、エル・システマジャパンの立ち上げから、ホワイトハンドコー ラス設立にも携わり、耳の聞こえない子どもを含む様々な障害を持つ子どもたちに音楽を教えている。現在エルシステマ・コネクト代表理事、ホワイトハンドコーラス NIPPONの芸術監督を務めている。セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使の夫人でもある。 1月21日(土)午後2時から すみだトリフォニーホール公演:ミュージカルオペラ(オペラ形式) 1月23日(月)午後7時から サントリーホール公演:演奏会形式 詳細は:https://www.njp.or.jp/concerts/230121 または オフィシャルFacebook 総監督(指揮/脚本/作曲/演出/振付)井上道義 タロー(テノール):工藤和真 正義(バリトン):大西宇宙 みちこ(リリック・ソプラノ):小林沙羅 マミ(ソプラノ):宮地江奈 エミ(メゾ・ソプラノ):鳥谷尚子 ピナ(ソプラノ):コロンえりか アンサンブル

「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ』展 開催

「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」展 開催 2022年12月21日(水曜日)~2023年5月28日(日曜日) ニューヨークのブルックリン美術館、パリ装飾芸術美術館等でも開催された巡回展覧会がいよいよ日本でも開幕した。 クリスチャン・ディオールと言えば、世界の女性を魅了してきたデザイナーだ。ディオール本人に続き、そのメゾンはイヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジョン・ガリアーノ、ジャン=フランコ・フェレ、現在のマリア・グラツィア・キウリに至るまで6人のデザイナーがその後継者としてメゾンとその美学を守り、いつの時代もファッションをリードしてきた。 しかし、この展覧会を通して多くの鑑賞者が感じたのは、ファッションという存在だけではないディオールの美学ではないだろうか。ファッションとは流行ではなく、むしろ普遍的とさえも言える。いいデザインの洋服には流行はない。ここではディオールとその周りを囲む多くの美術関係者によって、現代美術にまで昇華されたディオールの真髄を見ることができる。 この展覧会は「戦後パリと“ニュールック”」、「夢と形」、「ディオールと日本」、「芸術とファッション」と言った幾つかの章立てによってキュレーションされている。しかしこの展覧会を思いきり引き立てているのは重松象平によるセノグラフィーではないだろうか。 どの章にも舞台芸術のような美しいしつらえがその作品に寄り添う。セノグラフィーは英語ではScenographyとつづる。これはSceneプラスGraphicを意味している。つまりその場、景色を視覚、聴覚を通じて空間的に把握することだが、重松象平が作り出したその空間美は見事としか言いようがない。 「ディオールと日本」という章では、重松は日本の紙と木の文化が創り出す曲線とはかなささえも感じさせる美しさを見せている。日本とクリスチャン·ディオールは非常に長く、華麗な関係を持ってきた。ディオールという素晴らしいデザイナーの名前を広く日本人が知るようになったのは、皇太子(現上皇陛下)と正田美智子嬢(現上皇后陛下)のご成婚からではないだろうか。 現在の上皇后陛下のご成婚に際し、ディオールはそのウェディングドレスをデザインした。民間初の皇太子妃は明輝瑞鳥錦と呼ばれる厚手のシルクタフタを使った、日本とフランスの文化が融合した素晴らしいウェディングドレスをまとった。それはクリスチャン・ディオールによって着手されたものであり、その後、そのデザインを完成させたのは、わずか21歳でクリスチャン・ディオールを引き継いだイヴ・サン=ローランだ。この「ディオールと日本」という章では、その時代の画像も、また、ファッションモデルのようにポーズをとる高松宮妃殿下のポートレートなども見ることができる。 更に次の章に進んでいくと、新たなセノグラフィーと共にディオールが発表し続けた美しい作品が出てくる。そして、突然上から見るように現れるアトリウムの空間に改めて圧倒される。そそり立つ大きなオベリスクにも見える階段のような空間には、ディオールの制作した夜会服が展示されている。どのドレスもあまりにも豪華であり、時空をこえてその美しさを誇るかのように立っている。鑑賞者はその壮大で華麗な空間にあって、その圧倒的なディオールの美意識には抗うことができない。ふといつの間にか、自分がこの豪華なドレスをまとっているかのような幻想にさえ囚われる。 ディオールはデザイナーになる前は建築家を志していたという。人体は立体的であり、ファッションデザインもまたとても立体的だ。ディオールは立体ということを誰よりも理解していたに違いない。会場のセノグラフィーを手掛けた建築家、重松象平はディオールの「立体感」を現代に見事によみがえらせている。 クリスチャン・ディオールとは、服飾デザイナーという枠を超えたフランスが生んだ稀有の天才アーティストであったことは間違いない。素晴らしい!という言葉とともに、ため息が出る展覧会だった。

伝統工芸が結ぶシルクロードの美 開催のお知らせ

ユーラシア大陸の地域、国々では、シルクロードを通じて人々や伝統工芸品が行き交い、各々の文化と融合し、さらに独自の文化を育んできた。 コロナ禍のため、2度も延期となったシルクロードとその周辺地域の伝統工芸や音楽を披露する展覧会イベントがやっと開催されこととなった。 シルクロードを囲む国々の文化と、紀元前から母から子へ伝承されてきた手仕事には目を見張ることがある。この展覧会イベントでは、そうした美術工芸、手仕事を中心に、その地域の文化、図柄の意味などを含め、かなり深い部分まで見ていくことができる。 その中でも注目を浴びているのは、長い伝統と文化を誇るパレスチナ刺繍ではないだろうか。多彩な図柄と色合いによって独自の文化を守り続けてきたパレスチナ刺繍は、日本人の美的センスをとりいれたことにより、パレスチナ刺繍帯として生まれ変わっている。こうして新しい文化を取り入れることで、現地の女性の雇用も創出し、教育にも一役買っている。 SDGsにも通じ、伝統的な文化と新しい文化の両方を鑑賞できるこの展覧会イベントにぜひいらしていただきたい。 開催日時: チケット代: 5,000円(一枚)  開催会場: 九段ハウス(旧山口萬吉邸、登録有形文化財、通常非公開) 公式HP:https://kudan.house/ 東京都千代田区九段北1-15-9 (東京メトロ九段下駅1番出口より徒歩5分) 詳細・チケット情報:こちらから(https://2023-silkroad.peatix.com/) プログラム: 【オンライントークショー「文化の多様性、国際協力とモノヅクリ」】 ※本プログラムのみ1月14日(土)20:00-21:10 ※視聴URLを別途お送りします 出演:                                       ヴィヴィアン佐藤(美術家、文筆家、非建築家、映画批評家、ドラァグクイーン)    小幡星子(株式会社EARTHRISE代表)                        松浦元子(パキスタン・ワックスペインティング帯プロデューサー)         …

ポストコロナのツーリズムとは?『太平洋同盟Alianza del Pacíficoによる観光振興』

この度、2023年度の活発なツーリズムへの誘致を目的としたセミナーがペルー大使館で開催された。参加したペルー、メキシコ、コロンビア、チリの4か国は太平洋同盟(Alianza del Pacífico)を構成している。 太平洋同盟は3つの「統合の力」を発揮することを目的としている。その3つとは、 2011年に太平洋同盟が構成されて以来、外国投資誘致、ビジネス振興においては競争力のある様々な優位性を提供することができている。その結果として、この同盟に参加している4か国は、ラテンアメリカ及びカリブ地域において重要な地位を確立してきた。経済的競争力がある国々としてゆるぎない評価を得てもいる。そうした評価もあり、太平洋同盟加盟国はすでに世界80カ国以上と協定を締結し、アグリビジネス、製造業、鉱業、サービス業などを含む各分野のモノとサービスの輸出において世界的にも高い割合を示すようになった。 そうした国家を超えた発展を可能とした太平洋同盟加盟国は、ビジネスの活性化とさらには雇用の創出を可能としてきた。 コロナ禍がやや収まった現在、人々の注目はラテンアメリカおよびカリブ諸国への旅行に向かっていることは確かだ。太平洋同盟では日本におけるラテンアメリカ諸国およびカリブ地域への観光客の誘致を重視しており、航空会社、旅行社などとコラボしながら、日本からのツーリストの本格的な誘致に乗り出してきている。 太平洋同盟に加盟している国々には、魅力的な観光資源が多い。人々に感動をもたらすツーリズムに適した都市、自然、食、体験が満載だ。メキシコには、アステカ帝国の都でもあり、あらゆる時代を今もまだ感じることのできるメキシコ・シティがある。また、そのわずか50キロ北にはテオティワカン遺跡があり、観光には非常にアクセスがいい。この遺跡もまた世界遺産にも登録されている。コロンビアは大自然に恵まれ、多種多様な野鳥、昆虫の生態、蘭などの鑑賞ができる。首都メデジンには世界的に有名な画家、ボテロが制作した彫像が点在する公園、メデジン・カテドラルなどがあり、観光客には見逃せない地域だ。ペルーに至っては世界のツーリストの憧れとも言えるマチュピチュ遺跡、ナスカの地上絵などが存在し、世界のツーリストの憧れの地でもある。また、日本へのおいしい食品の輸出で知られるチリに代表されるように、極上のワインの産地でもあり、海の幸もおいしく、食事への期待は大きい。 こうした観光資源を最大限に活かすため、日本からよりアクセスしやすいよう、フライトの増便、航空便の接続などにも最大限の配慮が示されている。確かにラテンアメリカ、カリブ地域には今迄は遠いというイメージが先行してきた。しかし、その魅力を知れば、誰もが訪れてみたい地域だ。 外国投資の直接誘致において、ある程度の成功を収めつつある太平洋同盟が次に目指すものは、日本を含むアジアからのツーリズムの誘致だ。また、日本もまた、今迄訪れることが少なかったラテンの国々への旅に大きな期待を持っている。ラテンアメリカおよびカリブ地域については、日本人は「地球の反対側」という表現をしてきた。今、新たな体験とツーリズムを求めて、地球の反対側に行く時が来たと言える。 太平洋同盟 Pacific Alliance Alianza del Pacífico についてはこちらから。 【関連記事】