News

 日チリ外交関係樹立125周年記念

日チリ外交関係樹立125周年記念平和を願って:ラリ村のクリンの鶴を贈呈 最近、日本ではチリというと良質でおいしいワインを思い浮かべがちだ。チリのワインは日本の食卓をかなり豊かにしている。チリという太平洋を挟んだ遠い「隣国」と日本は、普遍的な価値を共有しつつ、深く長い友好関係を築いている。日チリ外交関係樹立125周年を迎える今年は、多くの記念すべきイベントが両国で開催され、改めてその関係の深さとチリの豊かな文化に触れる良い機会ともなっている。 その一つに、9月7日に広島市で開催される「平和のためのラリ村のクリンの鶴」寄贈式がある。このイベントは駐日チリ大使館が主催し、特別にチリの民芸家がデザインしたラリ村の馬の尾の毛織の鶴を広島の人々に寄贈する。 チリはワインのみならず、織物も重要な産物であり、そのクオリティは世界に知られている。このイベントには、チリ外務省文化芸術遺産外交局とチリ民芸財団が参加し、200年の歴史を持つ「クリン」と呼ばれる特別な織物技術を基づいた手作りの工芸品が選ばれた。 今回、チリ側は事前に平和への願いの世界的なシンボルともなったあるひとりの少女と折り鶴の物語に感銘をうけ、「鶴」というテーマを選んでいる。1945年8月に広島に投下された原子爆弾により、放射線浴びて原爆症の犠牲となった日本人少女、佐々木禎子の物語だ。禎子さんは、放射線による病を治したいという望みをかなえるために千羽鶴を織った。 平和への願いを込めた「クリンの鶴」は、平和と核兵器のない世界への誓いを表現するために、ラリ村から広島まで17,000キロメートル以上の旅をしてやってくる。 寄贈式は9月7日(水)午前10時30分より、広島おりずるタワー12階で開催され、この寄贈作品は2022年9月7日から1年間、広島のおりづるタワー12階に展示される。 チリと日本の友情、チリから届いた平和を願う気持ちに感謝し、改めて平和への願いを込めて、「クリンの鶴」の到着を待ちたい。 作品と作家について: この寄贈作品作成のため、チリでは民芸家が選ばれた。それぞれの民芸家はその芸術性によって「鶴」を表現している。 民芸家 Brigida Caro Cabrera ブリヒダ・カロ・カブレラ Mariela Medina Medina  マリエラ・メディナ・メディナ Ana María Contreras…

アンゴラ大使インタビュー

身近になりつつあるアフリカの大国、アンゴラ 豊かな資源、民主主義的思考と女性の活躍を応援 TICAD8も今年開催され、日本からのアフリカへの注目度はますます上がっている。この機会にアンゴラという国について、駐日アンゴラ特命全権大使、ルイ・オランド・シャビエル閣下にじっくりとお話しをお聴きした。 大使執務室でお目にかかった大使は、洗練された身のこなし、ヨーロッパ系の雰囲気も感じる素敵な紳士だ。大使の母国アンゴラは、アフリカ大陸西南部に位置し、その豊富な地下資源と急速な経済成長によってフロンティアマーケットとしての成長を続けている。日本との関係も大変良好だ。 アフリカの最先端の思考を知る上でも、是非とも皆さんに読んでいただきたい面白いインタビューになった。 質問:大使のキャリアについてお聞きしてもよろしいでしょうか。 外務省には1976年に入省いたしました。それから、いままでに国連、アフリカ連合などの国際的な会議に参加してきています。 外交官としては、第一書記官としてフランスに9か月間、参事官としてイタリアに6年間、公使参事官としてポルトガルに9年間の駐在経験があります。駐在の際は、在外公館勤務をいたしてまいりました。大使としてのミッションは日本が初めてです。2018年の12月5日に、天皇陛下に信任状を奉呈いたしました。 駐日大使になる前、外務省本省において多国間関係局長代理を務めており、色々な国のデリゲーションとコンタクトがありました。その中で、日本ともコンタクトがありました。日本への駐在の話があった時にはすぐに喜んで承諾いたしました。自分の新しいステージに踏み入れるという意味でも重要な経験であると思いました。 質問:アンゴラは、日本では今まではあまり知られていない国でしたが、大使のご着任後の努力が実り、両国間はとても近くなったと言えます。具体的な政治的、貿易などについてもお話しいただけますか。 まず、現在の日本とアンゴラの関係は素晴らしい関係だと言えることができます。今までもよいレベルでありましたが、私が日本に駐在することによって、さらによくなって行くようにといたしたいと願っています。私が駐在する前には、「今まで以上によりよい関係を作ってください」という政府からのミッションを与えられたという経緯もあるからです。 しかし、関係を作るというのは、そんなに簡単なことでないことは理解しています。日本にはアフリカに対する方針というのがあり、さらに独自の考え方があります。ですので、日本のやり方を理解した上で、こちら側からもスムーズに動くべきでしょう。日本がアフリカに対しても色々と提案をして下さること、関係性を持つことを、いつも深く考慮していくべきでしょう。そうした考えを持ちつつ、日本側からもアフリカに対してはさらに、共に深く掘り下げていけるようにと考えています。 また、日本にとって、アフリカは遠い、もしくはイメージ的に遠いと思われています。しかし、ネット社会が発達した今、この時代になりましたら、そんなに遠いという大陸というのはもうないのではないでしょうか。 ただ、日本からアフリカに対しての考え方には、政治的に不安定であるという心配は今もまだあるようです。しかし、現在においては、いくつかの例外もありますが、基本的にアフリカの国々は政治的に安定しています。多くの国々は平和になっています。つまり平和な政治が行われていると理解していただきたいと思います。 特にアンゴラが地理的に置かれている南部アフリカですが、南部アフリカ開発共同体(SADC)となっております。この地域は、本当に平和な政治が保たれています。そのSADC地域は、アフリカの中でも大変経済的にもポテンシャルがある地域でもあり、更には政治的にも安定しているという理想的な地域とも言えます。 ぜひとも、日本の方にはアフリカ、特に南部アフリカ、アンゴラに行っていただき、投資を考えていただきたいと願っています。アンゴラがあるこの地域には、本当に豊かな資源に恵まれています。駐日アンゴラ大使としても、大使館としても、アンゴラができる限り日本で知られるようと努力をし続けています。日本側からも、我々の努力をよい形で受け入れていただいていると思います。 質問:2020年初頭から全世界で新型コロナウィルス感染によるパンデミックが起きていますが、アンゴラはどのような状況にあったのでしょうか。 アンゴラでももちろん新型コロナウィルスに感染した人たちは多く、亡くなった方もいます。ですが、ヨーロッパに比べたら、それほど悲劇というほどの被害には至りませんでした。それには、アンゴラ政府が早めに行動を起こし、移動クリニックが出動し、出来るだけ早くワクチンを国民に接種するという政策が功を奏したと言えます。 質問:日本とアンゴラの関係について、具体的な政策はおありでしょうか。 最初に、アンゴラから、2018年の年末に、大変大切なデリゲーションが日本に参りました。そのデリゲーションの中には大臣が3名含まれておりました。 そのデリゲーションが来た時に、南にあるナミベ港の包括開発請負契約を締結されました。これはアンゴラ政府とJBIC(国際協力銀行)等の間での一般協定で、投資総額は約700億円に上ります。 また、JICA(独立行政法人 国際協力機構)の事務所がアンゴラにできました。JICAが力を入れていることもあり、JICA関連の契約が数多くなされています。…

ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)現在開催中

芸術×力という強烈なタイトルの展覧会が現在、東京都美術館で開催されている。 展覧会会場で感じる優れた芸術作品と権力には関係性がある。こうした芸術家を権力者が支援するというシステムはいつの時代にあっても確実に存在した。ルネサンスの隆盛にもその影響は大きく、豪商メディチ家の存在はとても大きい。 今回の展覧会は、まさに時の権力者が作らせ、愛した作品がそろえられている。キュレーションは多岐にわたり、けっして一つの時代、地域、芸術のスタイルにこだわっているわけではない。そのどれもが権力とはどういうものかを物語るようにち密で、素晴らしく美しい。 いくつかの作品を紹介すれば、芸術を愛したことで知られる乾隆帝の黄金に輝く《龍袍》と呼ばれる外衣が目に留まる。龍は皇帝を表す5本の爪をもち、米、山などの十二章は皇帝が宇宙さえも支配していることを表す。皇帝とはこういうものだと、この外衣は無言の威圧感をもって私たちに語り掛けてくる。 アメリカでもっとも裕福な女性と言われたマージョリー·メリウェザー·ポストが、英国王ジョージ5世とメアリー王妃に謁見する際に購入したエメラルドのブローチもその美しさに目を見張る。中央の大きなエメラルドの表面にはアイリスの模様が彫られている。それをぐるりと囲むダイヤと、そのダイヤに垂れ下がる大粒のエメラルドは、今も昔もアメリカの富の象徴とさえ言える。 日本美術も多く展示されているが、その中でも《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》は見逃せない。史実である平治の乱を題材に描いているが、その人物描写の面白さは興味深い。平治の乱の顛末は、武士の世の中の幕開けではあるが、ここでは貴族は白く、上品に描かれ、武士は下品な顔に描かれている。おそらく貴族階級によってオーダーされた作品なのだろう。また、このクーデターによって焼き払われる貴族の館を襲う炎の描写は素晴らしい。墨という画材がこれほどうまく使われ、炎を引き立てている表現は他に例がない。後の作家に大きく影響を与えたことも理解できる。 今回、約10年ぶりの里帰りを果たした《吉備大臣入唐絵巻》も見逃せない。遣唐使として唐に渡った吉備真備は、その才能を恐れられ、到着早々、唐の役人によって高楼に幽閉されてしまう。突然そこには赤鬼が現れ、吉備真備に知恵をさずけ、両名は協力しあって数々の難題を解き明かしていく。この赤鬼の正体は、すでに唐に渡り、客死していた阿倍仲麻呂だった。奇想天外なストーリー、吉備真備と赤鬼と化した阿倍仲麻呂の動きはまさに12世紀のサブカル、漫画とも言える。 この作品は昭和7年に、日本から売却という形でボストン美術館に渡っている。日本にあれば、確実に国宝に指定された作品だろう。しかし、当時の法により、こうした流出は防ぐことができなかった。その後、日本は第二次世界大戦を経験している。はたしてこうした国宝クラスの美術品を国家が守り切れたかはわからない。 海外流出によってボストン美術館に収められたがゆえにその形を保ち、その後、この作品は何度も日本に里帰りしている。これもまた権力がなせる業ではないか。 日本は権力、スポンサーが美術を擁護することが少ない。こうした文化への権力をより強めていく必要性さえも感じた。 すべてボストン美術館蔵 ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから) https://www.ntv.co.jp/boston2022/ 展覧会基本情報 会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日) 会場:東京都美術館 休室日:月曜日、9月20日(火)  ※ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室 ※日時指定予約制。当日券あり(ご来場時に予定枚数が終了している場合あり) 開室時間:9:30~17:30 金曜日は9:30~20:00 ※入室は閉室の30分前まで 展覧会公式サイト:https://www.ntv.co.jp/boston2022/ お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」

特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」開催中 宮内庁三の丸尚蔵館には素晴らしい美術作品が収蔵されている。そうした珠玉の作品に、東京藝術大学の収蔵品を加えて構成されたのがこの美術展だ。会場となった東京藝術大学大学美術館は、岡倉天心とフェノロサが中心となって開校した東京美術学校を前身とし、以来、日本の芸術教育として重要な役割を担っている。この展覧会はそうした日本美術のトップとも言える二つの組織が協働で作り上げている。 展示室に入ると、《菊蒔絵螺鈿棚》の美しさにはっと息をのむ。この作品は明治天皇のご許可のもと、東京美術学校と宮内省によって制作された。この精緻かつ美しい螺鈿細工には、東京美術学校の一期生であり、後に漆の第一人者となり、日本人なら誰もが目にしたことがある麒麟麦酒の麒麟のマークをデザインした六角紫水らが関わり、当時の最高の技術と美意識をもって制作されている。 最初の展示作品から、この展覧会には匠という言葉が関わっていることが伝わってくる。日本を代表する各分野の匠が、その技を競い合っている。日本古来の雅楽を舞う楽師を伝統的な彫金と鍛金の技術で制作した太平楽置物は、その工芸技術の高さに圧倒される。高村光雲作のつがいの《矮鶏置物》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、8月28日(日)までの展示)の羽の描写は素晴らしい。また、真っ白な麒麟を表現した十二代酒井田柿右衛門の《白磁麒麟置物》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、通期展示)は、本来の優しい性格を表した姿ではなく、左前脚を上げ、振り返って雄たけびを上げるような雄々しい姿で表されている。 この展覧会には生き物をテーマにした章もある。国宝《唐獅子図屏風》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、8月28日(日)までの展示)は、右隻を狩野永徳が描き、左隻をひ孫にあたる狩野常信が描いている。永徳はつがいの獅子を悠然とした姿に描き、ひ孫の常信は、躍動感あふれる獅子を描いている。 月次絵と呼ばれる一連のシリーズには、皇室ならではの四季の移ろいが感じられる。酒井抱一が描いた《花鳥十二ヶ月図》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、8月28日(日)までの展示)は、その月ごとに花を咲かせる美しい花々と野菜、鳥の姿を組み合わせている。七月の図として描かれた、紺色の朝顔の花の間からのぞく、トウモロコシの姿、のびやかな筆遣いで描いた葉は特に印象的だ。 この展覧会に出展された作品は一度に鑑賞する機会が少ないものばかりだ。この展覧会は、日本人だけでなく、是非とも外国人にも見て頂きたい。日本の美が詰まった宝箱を開けた気分になれる。 特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」展覧会公式HP 会期:2022年8月6日(土)〜9月25日(日) ※会期中、作品の展示替え及び巻替えがあります 会場:東京藝術大学大学美術館(台東区・上野公園) ※詳細は展覧会公式HPをご覧ください