現在、東京都美術館(東京・上野公園)では、「永遠の都ローマ展」が開催されている。 日本人の多くが憧れを抱いて訪れるイタリアの首都ローマは、「永遠の都」と呼ばれ、何時の時代も人々を魅了してきた。「永遠の都ローマ展」はその成り立ちから栄光の日々を語る展覧会だ。 この展覧会はローマの中心地に立つカピトリーノ美術館が所有している作品群を中心に約70点の彫刻、絵画、版画等から成り立っている。それは5つの章に分けられ、構成されている。 まず、「第一章:ローマ建国神話の創造」シクストゥス教皇は1471年、古代ローマ時代の4点のブロンズ像をローマ市民に寄贈する。そのブロンズ像は、《カピトリーノの牝狼》《コンスタンティヌス帝のブロンズ虚像》《とげを抜く少年》《カミッルス》だ。もちろん誰もが知る通り《カピトリーノの牝狼》は古代ローマの出発点とも言える作品であり、本章ではその複製が展示されている。この牝狼に乳をもらって育った双子ロムルスとレムスのうち、ロムルスは初代ローマ王となり、ローマは建国されていく。そのローマの成り立ちと栄光を如実に描いている。この展覧会の中でももっとも見ごたえがある圧巻の第一章だった。 「第二章:古代ローマ帝国の栄光」ではユリウス・カエサルとその遺志を継いだオクタウィアヌス(のちのアウグストゥス)によって都市の整備が進められ、共和制の時代に突き進んでいく時代を示している。そこにはギリシャの影響を多いに受けた美しい彫刻たちが立ち並んでいく。 「第三章:美術館の誕生からミケランジェロによる広場構想」では、都市計画がなされていくローマの姿を示す。ミケランジェロによってカピトリーノの丘の頂にカンピドリオ広場がデザインされていく。 続く「第四章:絵画館コレクション」では、1734年に始まるカピトリーノ美術館の創設から、その後、絵画コレクションの収集がなされていった経緯が紹介されている。併せて芸術家の育成のため、美術アカデミーが創設され、ヨーロッパ全土に学習の機会を与えたこと、そうした背景によって生まれた優れた作品が並ぶ。 最後は「第五章:芸術の都ローマへの憧れー空想と現実のあわい」と題され、芸術をリードしてきたローマのイメージをさまざまに表現した作品や、日本人を含めた外国人芸術家による作品をも受け入れた豊かな芸術環境について述べられている。 この展覧会は決して多くの作品を並べたタイプの展覧会ではない。むしろ作品数は少ないと言えるが、ひとつひとつの作品が極めて精巧で美しい。さらに圧倒的な存在感をもって見る人に迫ってくる。歴史と芸術のすばらしさを如実に感じることは間違いない。 この展覧会を見終わって、オードリーヘップバーンが主演した映画「ローマの休日」を思い出した。ヘップバーン扮するアン王女は記者から「どこがお気に召しましたか」との質問を受ける。最初、「どこも思い出深く、、、」と言い出した王女だが、指示された通りのコメントをやめる。そして「Rome, by all means, Rome(ローマ、なんといってもローマです)」と自らの感情をあらわにする。 そう!ローマだ。By all means, Rome! そのセンテンスがこの展覧会についてコメントするにふさわしい! 古代から時代をリードし、世界にその存在を示してきた都、ローマがこの展覧会には沢山詰まっている。ぜひとも見ていただきたい感動の展覧会だった。 【展覧会基本情報】 永遠の都ローマ展 Rome,…