フィン・ユールとデンマークの椅子
フィン・ユールとデンマークの椅子 現在開催中 高い芸術性と癒しの融合 極上の椅子を楽しむ 東京都美術館と北欧家具デザインの巨匠、フィン・ユールとの繋がりはとても深い。 画期的な企画展を開催し続けている東京都美術館は間違いなく日本でも指折りの名美術館だ。しかし、意外に知られていないのは、その館内にはフィン・ユールをはじめとするデンマークのデザイナーが手掛けた極上の家具が設置されていることだ。疲れたからと何気なく腰かけた椅子から特別の癒しを感じる。そんな特別な空間「佐藤慶太郎記念 アートラウンジ」が東京都美術館にはある。 現在開催中の企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」では、北欧の家具に関わる近代史から紹介されている。その歴史は18世紀に遡り、家具と人々の生活空間は、あらゆる人々に教育を施すというデンマークの啓蒙思想とともに発展してきたことにも理解が深まる。こうした教育と共に生活の質を高めようという運動を背景に、天才的デザイナー、フィン・ユールは生まれてきたのではないだろうか。 フィン・ユールがデザインを手掛けた椅子の数々はとても美しい。この展覧会のちらしにも使われた代表作「イージーチェア NO.45」は特別に優雅な美しい曲線をもつ。その肘は人々の腕にしなやかに、優しく沿うようにデザインされており、人間工学を理解しているとさえも言える。この椅子に座ることは、美しい椅子を楽しむだけでなく、椅子に抱かれ、包まれて、極上の癒しを感じることに他ならない。 この展覧会で特筆すべきことは、実際にこうした美しいデザインを持つ椅子に腰かけて、その感触を自分の体を持って感じ取れる展示スペースがあることだ。鑑賞者は、フィン・ユールとその仲間たちがリードした北欧家具の革命とも言える展示を見た後、このスペースに誘導される。ここでは疲れた身体を癒すにも、北欧家具という実用的な芸術を楽しむのには最適な空間だ。これは都美術館でなければ実現できない画期的かつ特権とも言える展示だ。 今、人々は新型コロナウィルス感染のパンデミックを経験し、自宅で働くという新しい生活スタイルに入っている。自宅が生活と労働の場となった今、人々が求めるのは労働効率と共に、癒しと安らぎではないだろうか。 東京都美術館が渾身のキュレーションで作り上げたこの展覧会にぜひとも足を運んでほしい。美しい家具を見るだけではなく、生活の質と人生を改めて考える素晴らしい時間になるはずだ。 展覧会の詳細: 会期:2022年7月23日(土)~10月9日(日) 会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C 休室日:月曜日、9月20日(火) ※ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室 開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで) 夜間開室金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで) 展覧会公式サイト:https://www.tobikan.jp/finnjuhl 東京都美術館公式Twitter 東京都美術館公式HP 【関連記事】 夏休みに行きたい美術展…